特殊なミュータンス菌ってどんなミュータンス菌？先生がたのご研究で、ミュータンス菌の一部の菌が、「脳の血管を攻撃する」という悪さをすることがわかったのだそうですね？仲野 ミュータンス菌って、歯にくっつき、砂糖から酸をつくってむし歯の原因になる細菌ですよね？ 「誰のお口のなかにも大抵いる」と聞いていますが……。そうなんですよ。仲野 そのとおりです。通常のミュータンス菌は、菌体の表面に「歯にくっつくタンパク」「砂糖を分解して酸をつくるタンパク」「ベタベタのバイオフィルムをつくるタンパク」をもっています。この3つのタンパクはむし歯に関わるもので、どのミュータンス菌もたいがいもっているものです。ところがじつはその仲間のなかに、さらに特殊な能力をもつ曲者がいまして。特殊なミュータンス菌？ータンス菌って、いくつも種類があるのですか？仲野 はい。乳酸菌にいろんな菌株があるように、ミュータンス菌にもいろんな菌株があるんですよ。私の所属する大阪大学歯学部はミュータンス菌の研究が以前から盛んで、現在３０００ほどの菌株を保有しています。酸をたくさん出す菌株、比較的おとなしめの菌株、いろんな性質のがいます。そんなに種類があるとは！仲野 たいていのかたは1種類、多いかたで2～5種類くらいのミュータンス菌がお口にいますが、そのなかに「コラーゲンに結合するタンパク」をもつ菌株がいるんです。コラーゲンというと、細胞に含まれる成分ですよね？仲野 そうです。血管などの組織が壊れるとコラーゲンがむき出しになりますが、そうしたところのコラーゲンにくっついて悪さをします。私たちはこのミュータンス菌を「Cnm陽性株」と呼んでいます。ミュそんな菌株がいるとは……。めずらしい種類なのでしょうね？仲野 じつは10人に約1～2人がもっています。えっ、意外と多い！仲野 そうなんです。最近この菌株の研究が進み、マウスを使った実験結果だけでなく、医科との共同研究で臨床データを出すことができたので、「お口の清潔を保つことが脳出血の予防になる」と自信をもって言えるようになりました。1人でも多くのかたに、あらためてお口の健康を40ミュータンス菌といっても、菌株により性質はさまざま。 10人に約1～2人のお口のなかに棲んでいる、コラーゲンにくっつく曲者ミュータンス菌とは？
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