nico 2021年12月号
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血小板の止血作用を邪魔してしまう!感染性心内膜炎の原因菌、Cnm陽性株守ることの大切さを知っていただければと思っています。Cnm陽性株のミュータンス菌がコラーゲンにくっつくとどういうことが起きるのですか?仲野 た部分のコラーゲンがむき出しになたとえば血管が傷むと、壊れり出血します。本来なら血小板がすぐにやってきて止血をするのですが、Cnm陽性株のミュータンス菌がコラーゲンにくっついてしまうと、血小板の仕事の邪魔をするので、出血が続いてしまうのです。ええっ、血が止まらない?!仲野 そして、感染したところにベタベタの塊をつくってしまいます。なんて恐ろしい……。ところで、脳出血というと中高年に多いのに、なぜ小児歯科がご専門の仲野先生が脳出血の研究を?仲野 じつは、子どもの感染性心内膜炎の研究がきっかけだったんです。感染性心内膜炎は、ミュータンス菌が心臓の弁に感染して起きる心臓病変として以前から知られていました。それで心臓疾患のあるお子さんが歯科で抜歯をするときは、前もって抗菌薬を飲み、感染しないように準備するのですけれど……。ふむふむ。仲野 なかにはご本人や親御さんがうっかりして、歯科に病気のことを伝えずに抜歯してしまうことがあるんですね。たいへん危険なことなのですが、ただ実際に感染性心内膜炎を起こすケースは少ないんですよ。へえ、不思議ですね。仲野 ですよね。それで研究をはじめたのですが、理由はどうやら子どもの側にあるのではなく、感染するミュータンス菌の性質の違いではないかと。心臓の弁に人工的に傷をつけたラットにCnm陽性株を感染させたところ、弁にベタベタが大量につき、一方Cnm陰性株では、ほとんどなにも起こらなかったのです。そんなに結果が違うとは。仲野 驚きでした。それなら感染性心内膜炎の代表的な合併症、脳血管障害はどうなのだろうと、その研究も並行して行うようになったのです。41血小板が働き止血Cnm陽性株血小板が働けない!疣腫2021年12月号血小板がやってきてすぐさま止血をします。血小板の仕事が邪魔されて、なかなか血が止まりません。Cnm陽性株に感染させたラットの心臓弁に、疣ベタベタの塊ができました。陰性株のほうには何も起きませんでした。ゆうしゅ腫と呼ばれるCnm陰性株に感染したラットの心臓(輪切り)Cnm陽性株に感染したラットの心臓(輪切り)Cnm陽性株がコラーゲンにくっつくと?ふつう血管から出血すると?

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