nico 2022年2月号
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歯の痛みを起こした意外な要因歯の痛みすでにありましたので。なるほど。松山 それで、コロナ禍で社会が一変するなか、人々にどんなことが起きているかを分析し、歯を守る予防行動につながるような情報発信ができればと考えたのです。具体的にはどんな設問について分析なさったのですか?松山 コロナ禍の影響として「収入の減少」「仕事の減少」「失業」の設問と、「直近1ヵ月に経験した歯の痛み」に関連した「歯みがきの頻度」「間食の頻度」「歯科受診を避けることがあったか」、それから精神的ストレスに関わる設問についてです。なぜ「歯の痛み」に注目を?松山 私たちが実際にお口のなかを診察しながら質問するわけではないので、答えやすい質問がいいなと思ったんです。「最近歯の痛みはありましたか?」であれば回答しやすく、リアルな回答を得られると考えて「歯の痛み」にフォーカスしてみたんです。――なるほど!結果はいかがでしたか?松山 回答者約25000人のデータを多変量ロジスティック回帰分析という方法で検証したところ、やはり社会経済状況が悪化した人は「歯の痛みが多い」ことがわかりました。たとえば失業をしたかたでは、「歯の痛み」の多さがオッズ比で2・17にもなったんですよ。 ところが、「なぜコロナ禍で社会経済状況が悪化すると歯が痛くなるのか」をさらに細かく分析したところ、当初の予想と異なった意外な結果だったんです。といいますと?松山 歯の痛みに至る理由としていちばん大きいのは、私としては「間食の頻度」「歯みがきの頻度」だろうと思っていたんですよ。たしかに、おうち時間が増えて、つい甘いおやつに手が伸びちゃったり、家飲みで寝る前の歯みがきが適当になっちゃったり。21041ストレスが歯の痛みに影響!?2022年2月号(オッズ比)3コロナ禍による社会経済状況の悪化と歯の痛みの関連は?2020年8~9月に日本全国の15~79歳男女を対象として実施された大規模インターネット調査(JACSIS研究)の回答者25,482名のデータを分析。コロナ禍による世帯収入の減少、仕事の減少、失業、直近1ヵ月の歯の痛みの関りについて、その他の背景因子を考慮した多変量ロジスティック回帰分析を行いました。社会経済状況がコロナ禍前と変化のない人をオッズ比1とし、社会経済状況が悪化した人の歯の痛みのオッズ比とくらべたところ、明らかな違いが認められました。世帯収入が減少した仕事が減少した失業した1.581.422.17

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