nico 2022年6月号
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いいね!日本で開発された歯科材料が世界中で使われているそうですね。田上 現在でも歯科用接着材は日本の製品がリードしているんですよ。歯にくっつく接着材って、ふつうの接着剤と違うのですか?田上 いちばんの特徴は、水に強いことです。たとえばアロンアルファは、一度くっつくと簡単には剥がれません。でも水につけると剥がれてくるんですよ。ぬれてるとつきませんしね。田上 そうですよね。もともと「接着」って技術は水が苦手です。だけど、口のなかには唾液がある。お茶も飲むし、いつも水分でジャブジャブです。だから「歯に丈夫にくっつく接着材」は、接着技術にとってとてもハードルの高い「夢の材料」だったんですよ。なるほど、納得です。田上 ただ、エナメル質にくっつく接着材は、わりと早くにできました。3年)で、日本でも石油化学関連の企エナメル質はアパタイトという無機質が主成分で、含まれる水分も少めなので接着しやすいんです。だったら問題クリアですね!田上 いや、問題は「象牙質」への接着です。象牙質にはエナメル質と違って、コラーゲン線維や水がたっぷり含まれています。むし歯の穴が象牙質に達すると、すごくシミて痛い。だから、詰め物は象牙質にこそ必要なんですが、これがなかなかくっつかないんです。それはたいへん!田上 日本が世界をリードしたのは、この象牙質にくっつく接着材の開発です。当時はオイルショック(197業が大打撃を受けました。起死回生を狙い新たなビジネスを模索するなか、着目したのが医療材料だったと言われています。企業と研究者がタッグを組み、未知の材料への本格的な挑戦がはじまりました。そんな時代背景があったのですね。現在盛んに行われている産学連携の走りかもしれませんね。水分の多い象牙質は接着材がくっつきにくい歯質を最大限残せるので、歯の耐久性維持に有利!削る量が少なく神経から遠いので治療時に痛みにくい!コンポジットレジン接着剤むし歯エナメル質象牙質2022年6月号41接着材を使った現在の治療よくくっつく接着材が開発されてからは、歯を余分に削らず、むし歯で汚れた部分を最低限取り除くだけで治療が可能になりました。 

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