イラストでみる口腔外科手術
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2CHAPTER 下顎孔伝達麻酔において,図2-27a,bに示すように,注射針は粘膜および粘膜下組織,さらに頬筋を貫いて内斜線の内側を骨面に沿って,側頭筋腱と内側翼突筋の間を下顎骨の下顎神経溝の前縁に向かう.針先が下顎神経溝の前縁を越えたところで,針先は確実に下歯槽神経の直前にあり,舌神経は針の内側にある.図2-28a,bは,この部分を口腔内からみたスキームである.内斜線と内側翼突筋,下歯槽神経,舌神経と頬神経の位置関係を立体的に把握しておく必要がある. 近年,下顎埋伏智歯の抜歯に際して,舌神経を損傷する事故が起こるようになった.下顎骨体の発育が不十分で,第二大臼歯と下顎枝前縁との間にスペースがない症例が増加している.このような場合には図2-29に示すように,埋伏歯を覆う粘膜下を舌神経が走行していて,粘膜骨膜弁を翻転する際に遠心切開の方向を誤ると,舌神経を切断する危険がある.そこで図2-30に示すように,歯槽骨の上を臼後三角の方向(正確には後上頬筋櫛の頬側寄りを)に切開する.そして,ここからフラップを翻転する際には,まず頬筋の起始部である後上頬筋櫛ないしは頬筋稜をみつけだし,その頬側方向に剥離を進める.舌側に向かって乱暴に剥離を進めると,舌神経を損傷する危険がある.また埋伏歯の歯冠を分離する際にもバーで舌神経を損傷する危険がある.図2-27 2進法による下顎孔伝達麻酔.1:内斜線後方の下顎骨内面に針をあてる.2:ついで後方の下顎神経溝に向かって針を進め,骨の感触が消えたところで止める.これにより舌神経と下歯槽神経の損傷もなく,確実に麻酔効果が得られる.1242下顎歯槽部、下顎骨

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