別冊 臨床家のための矯正YB2010
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インプラントアンカーの可能性と偶発症55インプラントアンカーの可能性と偶発症三村 博Possibilities and Complications of the TADsHiroshi MimuraMimura Orthodontic Officeaddress:Hibarigaoka-takano Bldg. 6F, 2-15-11 Yatomachi, Nishitokyo-shi, Tokyo 188-0001キーワード:上下顎前突,歯根吸収,切歯管,インプラントアンカー,皮質骨隆起東京都西東京市開業連絡先:〒188‐0001 東京都西東京市谷戸町 2‐15‐11 ひばりヶ丘高野ビル6F みむら矯正歯科はじめに ハイアングルで下顔面高の長いchinless profi leの成人の上下顎前突症例に対しては,上下顎同時移動術を併用した矯正治療が第一選択になるが,患者が顎外科手術を拒否した場合には,現段階ではインプラントアンカーを用いてバーティカルコントロールを行うことで,下顎を反時計回りに回転させる治療が次善の策となりうる. ミニスクリューを使用することで,完全固定として切歯を最大限に後退させるだけではなく,臼歯を含むトータルアーチを圧下することで下顎のオートローテーションを達成できたものの,歯の移動が著しかったための偶発症を引き起こした症例を経験し,歯の移動によるカムフラージュには限界があることを再確認した.症例の概要[初診時所見]患者:36歳4か月,女性主訴:上顎中切歯の捻転顔貌所見:側貌はコンベックスタイプで,オトガイの後退と口唇の突出が認められた.また,正貌では著しいガミーフェイスを呈していた(図1).既往歴:11歳から2年半ほどサービカルヘッドギアを併用し,非抜歯で矯正治療を受けた既往があった.口腔内所見:上顎中切歯には翼状捻転があり,下顎前歯部にはわずかな叢生がある.側方歯と大臼歯の関係はI級であった(図2).セファロ分析所見:FMA 43°とハイアングルを示し,SNA 81°,SNB 73°と下顎の後下方への回転と後退を示していた(図3A, 図4).診断と治療方針診断:アングルⅠ級,Skeletal2(ANB8°),Bimax-illary protrusion,ハイアングルケース(FMA43°) 骨格のパターンを治すべく,上下顎同時移動とオトガイ形成術を併用した顎外科手術を提案したが,患者は手術を拒否した.そのため,次善の策として上下顎前歯の整直のため上下顎左右第一小臼歯を抜歯し,完全固定と臼歯を含むトータルアーチの圧下を目的として上顎は頬骨下,下顎は歯槽部の口腔前庭最深部にミニスクリューを埋入することにした.[私の臨床観を変えた症例]CLINICAL CASE STUDY[症例に学ぶ]

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