別冊 臨床家のための矯正YB2010
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下顎の突出を主訴とする壮年期反対咬合者に上顎骨の前下方移動術で対応した症例61下顎の突出を主訴とする壮年期反対咬合者に上顎骨の前下方移動術で対応した症例曽矢猛美,川村 仁*Skeletal ClassⅢ Case in the Prime of Life Treated with Maxillary One Jaw SurgeryTakemi Soya, Hiroshi Kawamura*Soya Orthodontic Officeaddress:Daini MK Bldg. 5F, 3-2-16 Chuo, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 980-0021キーワード:壮年期,顎変形症,上顎one jaw surgery宮城県仙台市開業*東北大学大学院歯学研究科 口腔病態外科学講座 顎顔面外科学分野連絡先:〒980‐0021 宮城県仙台市青葉区中央 3‐2‐16 第2MKビル5F 曽矢矯正歯科クリニックはじめに 壮年期の顎変形症の治療においては,顎顔面部および口腔内の変形がさまざまに進行しているので,青年期の症例以上に考慮すべき点が多いことがある. 本症例は初診時57歳であったので,リスクを考えて外科的矯正治療を勧められなかった.しかし,本人が強く希望したので外科的矯正治療を行った. その治療経過をとおして,壮年期における顎変形症患者にとっても外科的矯正治療が大きな喜びをもたらすことを実感したので報告する.症 例[初診時所見]患者:57歳11か月,男性初診:2005年5月13日主訴:下顎が突出し,前歯で咬み合わない.既往歴:慢性頭痛で3回頭部の精密検査を受けたが,脳内科的に問題がない.顔貌所見 正貌では,左右の非対称性は認められない.側貌はconcaveタイプで,オトガイ下部から咽頭部周辺に加齢による筋肉の弛みがみられる.上唇をリラックスさせて観察すると,上顎切歯はまったく上唇から露出しない(図1).口腔内所見 反対咬合で著しいⅢ級を呈する.下顎歯列のSpee湾曲が強く,オーバーバイト6mm,オーバージェットは-4mmである.下顎切歯の歯頸部歯肉はかなり退縮し,下顎左右側切歯間のコンタクトは動揺歯保護の目的でレジン固定されている(図2).治療前セファログラム所見正 面: 骨格的な左右偏位は認められず,上顎咬合平面の左右的な傾斜も認められない(図3).側 面: 上顎骨は後方位,下顎骨は前方位をとり,ANB-4.4°,Wits値-10.1mmで骨格性下顎前突症である.Relaxed lip posture(上・下唇が垂直的に干渉しない状態)で撮影したセファログラムでは,上顎切歯[私の臨床観を変えた症例]CLINICAL CASE STUDY[症例に学ぶ]

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