別冊 臨床家のための矯正YB2010
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臨床家のための矯正Year Book’10102症 例 上顎右側側切歯の口蓋側転位を主訴に来院した8歳2か月男児である.諸検査の結果,Mesiofacial Type のアングルI級前歯部交叉咬合をともなう叢生症例と診断し,二期に分けて治療を開始した(図1, 2).一期治療はとくに問題もなく終了し,二期治療の後半になった15歳頃から反対咬合傾向を認め,全体的咬み合わせがまとまらなくなった.予定の終了時期はすでに過ぎていたが,装置を外すには程遠い状態であった(図3).初診時には,ほぼ標準トレースと一致していた(図4左下). ところが問題に気づき,セファロを撮影し標準トレースと重ねて見ると,下顎の成長が著しいことがわかった(図4右~6).矯正治療遅延の要因の一つとして,この下顎の成長の違いを患者に示し,成長が終了するまで観察しながら治療を進める必要性を説明したところ,理解と協力を得ることができた.その後,症例はほぼ満足な状態で終了することができた(図7~9). 模型や写真だけでは,骨格的な成長の違いを説明できるものではない.セファロのトレースを重ね合わせることで,素人の患者でも十分理解と協力を得ることができ,さらに,その後の対応を決める際にも有効な資料となった.このような利用法はセファロのもっとも基本的な使い方であるが,最近の社会情勢において,その有用性を強く感じさせてくれた1例である.図1 初診時.図2 初診時( )内は標準値.図3 二期治療中.[初診時:8歳2か月(図1, 2)][二期治療中:16歳4か月(図3)]137(128)9(7.5)8(7.5)66(65)12(12)13(12)28(29)58(55)82(87)83(87)84(91)32(26)2(6)47(48)27(26)2(3.5)

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