別冊 臨床家のための矯正YB2010
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148症 例[初診時所見]患者:4歳10か月,男児初診:1989年4月24日主訴:歯並びと咬み合わせを良くしたい.既往歴:特記事項なし.家族歴:特記事項なし.現病歴:1984年6月3日,両側性唇顎口蓋裂で出生.3か月,7か月に口唇形成術,1歳0か月に口蓋形成術,2歳4か月に口蓋修正術,3歳4か月に口唇鼻修正術を施行.4歳10か月時に昭和大学歯科病院小児歯科からの紹介で矯正歯科を受診した.顔貌所見:正貌はほぼ対称,側貌はコンベックスタイプを示し,口唇の突出を認めた(図1).口腔内所見: Hellmanの咬合発育段階はⅡAで,上顎歯列弓は狭窄歯列弓,下顎歯列弓はU字型を示した.オーバージェット+3.0mm,オーバーバイト+5.0mm,乳臼歯関係は両側ともにMesial step type,上顎両側乳犬歯,第一乳臼歯は交叉咬合を呈していた.下顎の正中線は顔面の正中に一致,上顎の正中線は右側に3.0mm偏位していた.また,中間顎(切歯骨)の突出と頬粘膜弁が認められた(図2).パノラマエックス線所見: 上顎の顎裂は両側に存在し,鼻腔側まで骨欠損が認められた.さらに,上顎右側側切歯,第二小臼歯の先天欠損が疑われた.下顎には骨欠損,歯数の異常は認められなかった(図3).セファログラム所見:正面セファログラムでは,側方への偏位は認められなかった. 飯塚・石川による側面の分析より,骨格系ではSNA 83.2°(+1S.D.),SNB 72.6°(-2S.D.),Gn-Cd 87.7mm(-2S.D.), Pog´-Go 56.5mm(-2S.D.),Cd-Go 36.5mm(-3S.D.)で下顎骨劣成長の傾向を示した.さらにMandibular plane angle 41.3°(+2S.D.),Gonial angle 141.5°(+3S.D.)で下顎骨の時計回りの回転と下顎角の開大が認められた. 歯系においては,U1 to FH plane angle 58.1°(-3S.D.),L1 to Mandibular plane angle 67.8°(-3S.D.)で上下顎乳切歯の舌側傾斜が認められた(図4, 31).模型分析所見: 小野の乳歯列・乳歯冠幅径標準偏差図表より,歯列弓幅径は上下顎とも狭い傾向が認められ,上顎は両側第二乳臼歯近心頬側分界溝間距離を除いてすべての項目で-3S.D.を超えて小さかった(図5).第12回症例検討:他流試合於:昭和大学歯学部矯正科CASE STUDY第2症例長期治療を要した両側性唇顎口蓋裂症例質問者:中島榮一郎*1,市川和博*2*1代表編集委員:東京都文京区開業,*2編集委員:東京都八王子市開業(槇 宏太郎*3)(*3:昭和大学歯学部 歯科矯正学教室)発表者:中納治久昭和大学歯学部 歯科矯正学教室連絡先:〒145‐8515 東京都大田区北千束 2‐1‐1Haruhisa Nakano

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