歯科医師のための睡眠医学
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睡眠の特徴1制御するためのペースメーカーでもある14. 睡眠−覚醒プロセスCの研究において,被験者のサーカディアンリズム(概日リズム)を評価するのに生物学的マーカーが使用される.体温のわずかな低下(1℃の100分の1),唾液中および血液中のメラトニンの上昇,成長ホルモン分泌などは,睡眠の初期,すなわち24時間サイクル中の真夜中付近でピークに達するため,プロセスCの頂点を示す重要な指標となる.興味深いことに,副腎皮質刺激ホルモン(副腎皮質刺激ホルモンとコルチゾール)は睡眠の最初の1時間の間に,もっとも低いレベルに達する11,15.そして,プロセスCの後半に頂点に到達する.また,ホルモン放出と関連している体温を記録し,脳波,筋電図,心拍数を測定するポリグラフィーによっても,プロセスCを研究することができる.ウルトラディアンリズム 睡眠と覚醒の24時間のプロセスCのなかにおける睡眠の開始と維持は,脳,筋肉,および自律神経,心臓,呼吸活動が変動する3〜5の期間からなるウルトラディアンリズムによって制御されている(図1-2,1-3).これらのサイクルはレム(REM: rapid eye movement)睡眠(活動期)とノンレム睡眠(浅い睡眠段階〜深い睡眠段階)から成る.レム睡眠段階はヨーロッパでは逆説睡眠として知られている. ヒトでは,覚醒から睡眠開始にかけて,脳波,筋活動そして心拍の明確な減少が観測される.この減少は,睡眠段階1に向かう睡眠と脳波の同期に関連している.睡眠段階1は覚醒と睡眠の移行期間である.その後,総睡眠時間の約50%から60%を占める睡眠段階2が開始する.睡眠段階2は2つの脳波信号,すなわちK複合(短く大きな振幅の脳波)と紡錘波(急速で,ぜんまいのような脳波)によって特徴づけられる.どちらの波形も睡眠の開始と維持をみるための要素として認識されている.睡眠段階1と2の睡眠深度は軽度〜中等度として分類される. つぎに,睡眠は深い睡眠あるいは睡眠段階3,4といわれる静かな期間に移行する.これらの睡眠段階では,ゆっくりとした大きな振幅の脳波が特徴的である.睡眠段階の3と4は通常一緒にして記録され,徐波(デルタ波,=0.5-4.5H)が優勢なことが特徴的である.この睡眠段階は,いわゆる睡眠回復の過程である. 最後に,急速に睡眠段階が上昇し,浅い睡眠か図1-2 ノンレム睡眠からレム睡眠までの1サイクル中の睡眠段階の例.この周期は,1回の睡眠中に70〜110分間ごとに,3〜5回発生する.覚醒睡眠段階1浅い睡眠睡眠段階2睡眠段階2睡眠段階5あるいはレム睡眠上昇段階下降段階睡眠段階3,4深い睡眠

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