バーティカルオグメンテーション
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4章 トラブルシューティング761同時法による術中に起こる偶発症 下顎臼歯群567欠損部の下顎管を走行する神経・動脈は下歯槽神経・動脈、オトガイ神経・動脈である。同時法における下顎管および神経・動脈の穿孔、損傷などの偶発症が解剖学的に部位特異性を持った下顎567番部にどのような影響を及ぼすかについて解説してみる。術式部位状況原因対処法防止策段階法(staged approach)5番固定用ネジによる下顎管穿孔・下顎管上縁部の骨質不良(海綿骨D4~D5)・固定用ネジの方向の不一致・固定用ネジ設置後、下顎管穿孔の確認のためデンタルX線・CT診査を行う。・下顎管に固定用ネジが接している場合は撤去→止血処置→設置場所を変更する。・下顎管損傷の場合は手術を中止する。オトガイ孔を明示しオトガイ神経と下顎管の位置を確認したのち、固定用ネジを設置する(メンブレン固定用、scaff old安定用)。切開時オトガイ神経・動脈損傷【症例4-1-6】5番オトガイ神経開口部3mm以内の切開・止血、オトガイ神経部の粘膜縫合→手術を中止する。・術後、麻痺部の確認をする。5番歯槽頂部とオトガイ神経開口部が接近している場合は、舌側寄りの3mm以上離した切開線のデザインをする。減張切開時オトガイ神経・動脈損傷5番オトガイ神経開口部3mm以内の減張切開・止血、オトガイ神経部の粘膜縫合→手術を中止する。・術後、麻痺部の確認をする。・5番オトガイ神経開口部より3mm以上離す。・ブレードの深さは3mm以内にする。骨膜縫合時オトガイ神経・動脈損傷5番オトガイ神経開口部3mm以内への骨膜縫合針の使用により神経の損傷・術後麻痺の確認をする。・穿刺後唇側内部に出血斑が出現した場合、その部位での骨膜縫合の穿刺をやめ、部位を変える。5番オトガイ神経開口部の骨膜縫合では、唇側内面部で3mm以上離す。6番減張切開時オトガイ神経・動脈損傷6番近心部から5番遠心部へのブレードの深い挿入・止血、オトガイ神経部の粘膜縫合→手術を中止する。・術後、麻痺部の確認をする。・ブレードの深さは3mm以内にする。・減張切開時に出血を最小限にする(視野の確保)。67番固定用ネジによる下顎管穿孔下顎管上縁部の骨質不良(海綿骨D4~D5)・固定用ネジ設置後、下顎管穿孔の確認のためデンタルX線・CT診査を行う。・下顎管損傷の場合は手術を中止する。・下顎管に接する方向に固定用ネジを設置しない。・顎堤の頬舌の歯槽頂部付近で骨質の良好な場所を選択する。固定用ネジの長さの選択ミス【症例4-1-7】固定用ネジの方向の不一致・下顎管に固定用ネジが接している場合は撤去→止血処置→設置場所を変更する。・固定用ネジの選択を術前のCTにて診査する。7番舌側粘膜骨膜弁の穿孔【症例4-1-8】舌側部の粘膜骨膜部は薄いために粘膜剥離子で舌側部の顎舌骨筋部を穿孔・テルダーミスを舌側粘膜穿孔部に挿入→PRFで覆い、マットレス縫合にて粘膜骨膜弁を縫合する。・舌側部から圧迫止血する。・粘膜剥離子の使用に注意する。・ブレードを顎舌骨筋および骨膜の減張切開には使用しない。骨補填材料の流出・歯槽頂切開の遠心部から舌側部に斜切開を入れたことによる骨補填材料の流出・顎堤への骨補填材料の圧接(ボーングラフト)が不十分なことによるメンブレン遠心部から頬舌側への流出・骨補填材料単独の使用・歯槽頂切開の遠心部から舌側部に斜切開を入れない。・ 顎堤への最初の骨補填材料は自家骨またはDFDBAを圧接(ボーングラフト)する。・骨補填材料の操作性向上にPRPを混入する。・吸収が大きな顎堤では、固定用ネジを頬舌側に設置し骨補填材料の安定を図る。・Scaff old内を安定後、固定用ネジ、タックピン、膜縫合を用いてメンブレンを封鎖する。表4-1-2 手術中に起こる偶発症の部位、状況、原因、対処法および防止策(段階法)

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