歯周-矯正治療 STOP&GO
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85Chapter5/Stopサインの症例② 治療期間が長期化したことなどが原因で,患者のモチベーションが低下した.その結果,プラークコントロールに対して協力的でなくなった.一度,低下したモチベーションを再度高めることは,非常に難しい.治療当初高かったモチベーションをできるだけ維持できるよう,患者とコミュニケーションをとりながら治療を進めていく配慮が必要である.モチベーションが低下してしまった場合,カウンセリングを行いながら,プラークコントロールの必要性を再認識してもらうことが必要である.また,患者からモチベーションが低下した原因を探り,できれば矯正歯科治療に反映する,あるいは患者が不満に感じていることに対して,医院側は詳しく説明し,患者に対して理解を求める努力が必要となる. 歯肉に炎症が生じているため,アーチワイヤーを撤去してブラッシングしやすい環境にし,適切な歯周治療を行いながら,炎症が治まるまで観察する.また,炎症が治まれば治療を再開するのだが,患者のモチベーションを維持することができるよう,医院側も努力することが必要である.③ 患者の生活環境が変化し,プラークコントロールに対して協力的でなくなった. 患者とカウンセリングを行いながら,患者の置かれている状況を把握し,今後,プラークコントロールをどのようにして行えばよいのかなどについて,相談に応じるとよい.歯肉に炎症が生じているため,アーチワイヤーを撤去してブラッシングしやすい環境にし,適切な歯周治療を行いながら,炎症が治まるまで観察する.また,炎症が治まれば矯正歯科治療を再開するとよい.歯肉から歯根が触れる 下顎前歯部の唇側や舌側歯肉部に,歯肉から歯根が触れることがある(図2).下顎前歯部の歯槽骨の唇舌的な幅が狭い症例は,歯の移動の許容量が少ない.そのような環境の下,歯を唇舌側に傾斜させた場合に起こることがある.このまま治療を継続せず,一度セファロ写真などを撮影して,症状を確認する必要がある.ワイヤーにトルクを加えて歯根を安全な位置に移動させる必要があり,治療計画や治療予定の見直しが必要と考えられる.図2 歯肉から歯根が触れることがある.術前に必ず口腔内写真を撮影しておき,術中の異常と考えられる所見と比較する必要がある.

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