歯周抗菌療法 ―感染症医的な視点から―
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47第1章 ペニシリン合をみてみると,ペニシリンや第3世代セファロスポリン,バンコマイシン,キノロンなどは炎症があるときには移行するが,炎症がなければ移行しない.アミノグリコシド,第1・第2世代セファロスポリン,マクロライドにいたっては炎症があっても移行しない.ST合剤やメトロニダゾール,クロラムフェニコールなどは炎症がなくても移行する(表6).髄膜と並んで抗菌薬が届きにくい臓器では前立腺が有名である. このようにターゲットとする臓器や組織に抗菌薬がどれくらい届くのかということはきわめて重要なことで,歯周治療では歯周組織を経由して最終的に歯肉溝滲出液とともにポケット内に届かなければ効果がない(図19).しかも菌種によって撃破できる濃度が異なるため話は複雑になる.この点はまとめて後述する. さて,抗菌薬の排泄も大切な情報である.抗菌薬は主に腎臓か肝臓から排出される(図20).アミノグリコシドは濃度依存性抗菌薬であるため高濃度を使用したいところであるが,もともと腎毒性があるため,腎臓に問題のある場合は使用できない.ペニシリンは主に腎臓から排出されるが,腎毒性はほとん抗菌薬血管細菌バイオフィルム健康時腎機能低下時同じキャパシティ同じ抗菌薬投与量少ない排出量オーバーフロー主に腎臓で代謝主に肝臓で代謝腎臓・肝臓,両方で代謝ペニシリンセファロスポリンカルバペネムキノロンテトラサイクリンバンコマイシンアミノグリコシドマクロライドメトロニダゾールクリンダマイシンドキシサイクリンミノサイクリンクロラムフェニコールセフトリアキシンシプロフロキサリンST合剤クラリスロマイシン図19 内服した抗菌薬は最終的にポケット上皮下の毛細血管にたどり着き,歯肉溝滲出液とともにポケット内に滲出してくる.図21 腎排泄タイプの抗菌薬の使用にあたっては,腎機能が落ちていると抗菌薬の排出量が少ないので,通常量の投薬をしていると体内に蓄積していく.そのためクリアランスに応じて投与量を少なくしなければならない.▲図20 内服した抗菌薬が腎臓で代謝されるのか,肝臓で代謝されるのか,あるいはその両方で代謝されるのかは,抗菌薬の選択や投与量の決定において大切な要因である.内服抗菌薬のデリバリー腎機能低下と投与量抗菌薬の代謝経路

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