今後の難症例を解決する総義歯補綴臨床のナビゲーション
1/8

8 従来の無歯顎患者は、歯槽骨と咀嚼粘膜(角化粘膜)が保存され下顎位も安定していて機能障害の程度も小さく、総義歯の体積、形態、人工歯排列位置などの完成義歯のイメージをすることは比較的容易であった。 現在の難症例、今後増大が予測される超難症例は、歯槽骨と角化粘膜が喪失(被覆粘膜が露出)し、下顎位の偏位、咀嚼運動パターンの不安定などによる機能障害が進行している。 患者の生活習慣、歯科既往歴、全身的既往歴、社会的背景など複雑な要因の蓄積で無歯顎となり、顎堤吸収は上下顎、左右側、前後側で非対称を認め、解剖学的指標も不明瞭で、機能障害が高度に進行しているために完成義歯のイメージがつかみにくい。 義歯の形態と機能は連動しているので、あらゆる無歯顎の状態を分類し、完成義歯を想像して診査・診断・治療、術後管理ができる知識,手技を身につけるため、「この顎堤から完成義歯」を示す。読者においてはその治療過程を考察されたい(詳細は本書第8章に記載)。症例① 長期的に安定した症例(100歳症例)●患者は100歳。上顎は無歯顎であるが顎堤が比較的良好に保存されている。●臼歯部は顎堤の吸収を認めるが、前歯部の顎堤は保存されている。●咬合面観。下顎位、咀嚼、嚥下機能は長期に安定している。患者に応じた義歯形態と人工歯排列、咬合様式を付与した。●上顎の咬合面観。前歯を使いながら安定したフルバランスドオクルージョンが長期にわたり健康長寿に貢献している。難易度からみる顎堤の状態と完成義歯この顎堤からこの完成義歯を想像できますか?

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です