今後の難症例を解決する総義歯補綴臨床のナビゲーション
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34第3章図3‐8 歯の喪失にともなう上顎骨の外部形態変化。写真上:有歯顎、写真下:無歯顎。a:上顎結節、b:翼状突起。←で示した部分は吸収した歯槽突起である。図3‐9 歯の喪失に伴う硬口蓋の形態変化。写真上:有歯顎、写真下:無歯顎。a:切歯窩(切歯管の出口)、b:口蓋突起、c:大口蓋孔。は、義歯装着時に義歯床の維持が十分には得られないことがある。 さらに、歯槽突起の吸収は全体的に唇(頬)側から起こるため、無歯顎になると歯槽頂が舌側に移動することにより歯槽頂がつくる馬蹄形は有歯顎に比べて小さくなる。また、歯槽突起の吸収とともに、口蓋突起も菲薄化する。 口蓋突起は、上顎骨体内側面の下部から内方に突出する骨板で、左右の突起が合して骨口蓋の前方大部分を構成する。 前方の切歯部には上顎神経の枝で鼻口蓋神経が通る切歯管の開口部が、後方の口蓋骨との境には大口蓋神経が通る大口蓋管の開口部がみられる。これらは無歯顎になると拡大し、義歯装着時の疼痛の一因となる(図3‐9)。Ⅱ. 顎関節の特徴と歯牙喪失後の形態変化1.顎関節の基本形態 総義歯治療に際しては、顎関節部の解剖についての十分な理解が必要となる。そこで顎関節部を骨部(下顎頭、下顎窩、関節結節)と軟組織部(関節円板、靭帯、関節包など)に分け解説する。そして歯牙喪失後の形態変化について解説を加える。 顎関節は下顎骨と側頭骨とを連結し、顎運動を規制する左右1対の顆状関節であり、両側が同時に機能するというほかの部位の関節とは異なった特徴を有する(図3‐10)。そのため、片側に変化が生じた場合、他側にも影響が及ぶこととなる。 ヒトは雑食性であるため、顎関節は、咬断(蝶番運動)と臼磨(滑走運動)とがバランス良く行われるようにつくられている。ababbacbac

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