知りたい・聞きたい歯科矯正
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78メカニクスに関するQ&APART 2アンチカーブオブスピー,トーイン,ティップバックベンド,それぞれのベンドは,どのようなときに付与すればよいですか?Aアンチカーブオブスピーはスピー湾曲が強いとき.トーインは大臼歯を遠心にローテーションしたいとき.ティップバックベンドは大臼歯を遠心に傾斜させたいときに使いますアンクベに付Q4uestion中島:基本的な意味は,カーブオブスピーの著しい症例に対して,それを予防・改善するためのベンドが,アンチカーブオブスピーということだと思います.通常は,「アンチ」という言葉はあまり聞かないですね.antiは主に考え方とか意見とかに使う接頭語なので,一般的には「リバースカーブオブスピー」という単語を使います(図4-1). トーインというのは,基本的には上下顎の6番の遠心への回転を起こすためのベンドのやり方を言います(図4-2). ティップバックベンドも,ティップバックというのは上下顎に使いますが,主に下顎の6番の遠心への傾斜を強めるためのベンドです(図4-3). それらが必要な症例ということになりますが,リバースカーブオブスピーというのは,Class II division1で,ディープオーバーバイト,それからオーバージェットが大きい症例に関して,カーブオブスピーを改善するという目的で使われてきました. 私の考えでは,ディープオーバーバイトがすべて上下の歯牙の関係だけ生じてきたのならば,この手法だけで有効だとは思いますが,それ以外の何らかの要因,たとえばスケルタルな要因,筋神経機構の要因等が関与しているときは,それらの要因を改善した上で,ワイヤーでの調整がいいと思います. その指標のひとつは,Rickettsのフェイシャルタイプです.成長期であれば,可能な限り事前にそれを改善しておくことが必要になってくると思います.成人の症例においても,可能な限り筋神経機構を改善した上で,カーブオブスピーやディープバイトとかを改善していくべきです.そうでないとあっという間に後戻りを起こす可能性が高いと思います. なぜオーバージェットが大きくなるかというと,これらの症例の多くは上顎の6番が近心へのローテーションが起きていて,それによって,アーチフォームもV字型のアーチになってきて,それにともない上顎前歯が唇側へティッピングしてきます.それをU字型のアーチに治すためには,拡大と一緒に6番にトーインを加えて,遠心へのローテーションを加える必要があります. それから,ディープバイトの症例の拡大と一緒に6番・7番に関しては,近心へ倒れている症例が多い.だから,それを元に戻すということであれば,ティップバックもしなければいけません.槇:もしカーブオブスピーが強いまま,抜歯症例で3番を移動しなければならないとなると,ただでさえ傾斜しやすいのに,またどんどん傾斜していってしまい,取り返しのつかないことになる.だから,やはりカーブオブスピーはなるべく平らにしておいたほうがいいとは思います.次の操作をやりやすくするという意味においてです. ただし,スピーはもう一回ついてくるというのを覚悟して仕上げるとかは必要かもしれません.こういう小手先のやり方というのはよくないのですが,抜歯症例においてどのような湾曲を付与すべきかという議論は,まだまだ解決されておりません.リテンションのときにスピーがどう変化するかをきちんとみることも大事です. また,トルク操作や傾斜させるベンディングに関して,それらが複合された場合に,推測しなかった力を与えていることもありますので,よく考える必要があります.アーチを狭くするとトルクがかかってしまうとかです.中島:この場合,当然エキスパンションとトルクというものを一緒に考える必要があります.ただ,全部横・ラテラルでしか考えられていないので,三次元でとらえる必要があります.

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