薬12/13歯科
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35炎症/智歯周囲炎Chapter1アセトアミノフェン(カロナール®)1錠 300㎎ 1回2錠 疼痛時 頓用 3回分妊娠・授乳婦アモキシシリン(サワシリン®)1カプセル250㎎ 1回1カプセル 1日3回 毎食後 3日分アセトアミノフェン(カロナール®)1錠300㎎ 1回2錠 疼痛時 頓用 3回分投薬の背景 智歯周囲炎は智歯周囲組織に起こる歯性感染症で,その発現頻度は高く,上顎に比較して下顎に多い.智歯の萌出はその解剖学的部位により,しばしば不完全萌出や萌出方向異常を生じる.このため,わずかに露出した歯冠部以外は粘膜で覆われ,深いポケットが形成される.この部位は食物の停滞や清掃が難しいこともあり,細菌増殖に適した環境となる.また,咀嚼時ポケットへの食片の圧入や,対合智歯の挺出による被覆粘膜への傷害など,炎症が生じやすい.ときに宿主の抵抗力の低下とあいまって急性症状を呈する. さらに,この部位の炎症は周囲組織へ波及しやすく,腫脹や疼痛による嚥下困難,開口障害による摂食困難をきたし,全身症状を悪化させることがある.急性症状の対応としては,局所の安静を図るための洗浄,膿瘍の形成を認めた場合の切開排膿,病巣を刺激する対合咬頭の削合を行い,同時に消炎鎮痛薬や抗菌薬を投与する.症状改善後,原因歯の抜歯が望まれる.投薬のポイント 智歯周囲炎は,起炎菌が口腔レンサ球菌や,嫌気性菌(ペプトストレプトコッカス属,プレボテラ属など)の混合感染症であることが多い.このため広域性で殺菌力の強いペニシリン系,セフェム系を第1選択として,投与量は基本量に基づき3日間投与を目安とする.重症度に応じて投与量,投与回数を増やすこともある.投与開始後48時間を経て症状の改善をみない場合,混合感染を疑いマクロライド系に変更する. 疼痛に対しては通常鎮痛作用が強く,消化器症状の少ない非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ロキソプロフェンナトリウムを選択する.これら薬剤の投与にはアレルギーの既往,全身疾患の有無を問診により確実に把握しておくことが大切である.見逃せない副作用,相互作用 高齢社会となり,ワルファリン服用患者の炎症に対し抗菌薬や鎮痛薬を投与する機会が増えている.しかし,服用患者へのこれら薬剤の投与は抗血液凝固作用を増強し,出血傾向を増大させる場合がある. 加えて,同患者に炎症による摂食障害が生じた場合も,ビタミンKの摂取量が減少することで,出血傾向が増大する.広域ペニシリン系,セフェム系,マクロライド系の抗菌薬およびNSAIDsのいずれもワルファリンと相互作用を示し,PT-INR値が上昇する.ワルファリンに対する感受性は個体差が大きく,このため一律に安全基準を設けることは難しい.たとえ短期投与であっても,症例によってはPT-INR値のモニタリングを行い,医科主治医との対診を必要とする場合がある.

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