薬12/13歯科
7/8

204漢方治療が有効だと思われる疾患/口内炎の漢方治療Chapter8王 宝禮大阪歯科大学歯科医学教育開発室〒573‐1121 大阪府枚方市楠葉花園町8‐1口内炎の漢方医学的考え方 口内炎の漢方医学的所見には,舌所見と舌以外の所見がある(表1). 主な舌所見には,厚い黄白色舌苔,舌尖部の点状発赤,舌苔の部分的奪脱,歯根舌,舌苔の乾燥,淡白な舌色がある. 舌以外の所見としては,たとえばアフタ性口内炎は直径約2~10㎜の類円形で,赤色を有する小潰瘍が孤立性あるいは多発性に形成される.また,比較的大きな潰瘍を形成するもの,小水疱,粘膜面の点状発赤,歯肉の壊死,偽膜形成などが挙げられる. 漢方医学的な治療のポイントは,急性期(実熱)の場合と慢性期(気き虚きょ,血けっ虚きょ,虚きょ熱ねつ)の状態に分け,また各臓腑の熱の状態を考慮しながら治療方針を決定していく.最近では易感染性宿主(担がん患者や長期ステロイド投与患者など)の口内炎もあり,清熱剤(熱ねっしょう証を治療する方剤)や補剤(生体の機能賦活剤)を上手に選択することも重要である.口内炎に有効な漢方薬とその選択 口内炎の証と症状を考慮した漢方薬の選択法を図1に示す.たとえば実証で便秘のある場合で,のぼせやイライラがあれば三さんのうしゃしんとう黄瀉心湯を,口渇や尿量減少があれば茵いん�ちん蒿こうとう湯を選択する.便秘がなく,口の渇きがあって水を多く飲みたいという口渇がある場合は白びゃっこ虎加かにんじんとう人参湯を,口の渇きがあっても飲む水の量が多くないという口乾の場合は,のぼせやイライラがあれば黄おう連れん解げ毒どく湯とう,口や肌に潤いがないときは温うんせいいん清飲を選択する.口の渇きがなく,胃の痛みがある場合は黄おうれんとう連湯,みぞおちのつかえ(心しん下か痞ひ)や吐き気がある場合は半はん夏げ瀉しゃ心しん湯とうを選択する.急性期(実熱)の場合は陽気亢進や体中の熱により心,胃,肝などに影響すると考えられることから,心,胃,肝などの熱を冷ます治療が必要となる. 虚きょしょう証の場合は,胃腸が丈夫か虚弱かで分け,さらに湿(水分代謝が低い)か燥(乾燥体質)か,軟便の有無や貧血の有無などで,それぞれの漢方薬を選択する.慢性に経過した場合,虚証の熱による体液の消耗,相対的な陽気の余剰,脾ひ胃い気き虚きょなどの所見を呈するため,補腎剤として六ろく味み丸がん,補気剤として補ほちゅう中益えっきとう気湯,六りっくん君子し湯とう,気血両補剤として十じゅうぜん全大だい補ほ湯とう,人にん参じん養よう栄えい湯とう,清熱剤として清せいねつ熱補ほ気き湯とう,清せい熱ねつ補ほ血けつ湯とうなどを選択する. 最近では,長期にわたる難治性口内炎に清熱補気湯や清熱補血湯が有効であるという報告があり,抗がん薬の副作用として発生した口内炎に半夏瀉心湯が有効であるという報告がある.甘かんぞうとう草湯や桔ききょう梗湯とうは扁桃炎や口内炎に対する含嗽薬としても有用である.口内炎の漢方治療

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です