1からわかるコンポジットレジン修復
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刊行にあたって 本書のきっかけは,クインテッセンス出版の玉手一成さんから,ご自身の歯科受診経験をもとに『ある先生が詰めるとずっと落ちないのに,別な先生が詰めるとすぐに外れてしまう.だれもがこれをみれば外れない充填ができるような本は作れないか?』という難題を振られたことでした. 歯科大学では,講義だけでなく実習があります.これは言葉だけでは伝えきれないものを,実習を通して各個人に実感してもいたいからです.したがって,どんなに言葉を尽くしても,伝えられない,伝わらないことがたくさんあります.まったく歯科に関する知識のない方々に,言葉だけで歯科治療の実際を伝えることは不可能です.しかし,歯科医師として臨床経験を少しでも積まれ,患者さんを前にして,できることとできないことを実感されている方には,少しでも道標になるようなことは書けるのではないかと思いました. 私の医院には,いまでも『他院で詰めてもらったけどしみるので,診てください』という患者さんが年に数名いらっしゃいます.歯髄に近いような深いう蝕の修復の場合もありますが,多くの場合が象牙質内にわずかに入った症例で,本来なら無麻酔で簡単に修復できるようなものです.おそらく,局所麻酔をして健全象牙質まで切り込んでしまった状態で接着がうまくいかなかったのでしょう. 接着性コンポジットレジン修復はあくまでも手段にしか過ぎません.欠損部を補填して機能と形態を回復する一技法ですが,痛みがでてしまっては患者さんの信用を失いかねません.術後痛を防ぎ,安心して充填修復を行うには,充填に適した時期の選択,健全象牙質を極力削らない切削技術,そして確実に接着させる製品と技術が必要です. 本書では,診断にはじまり,窩洞形成の原則と実際,接着の性質と臨床手順などに関して,私が日常臨床で行っていること,そして頭のなかにあることをそのまま書きました.私の筆力では,十分に書き切れたとはいいがたいのですが,少しでも,若い先生方の力になれば,これ以上の喜びはありません. 最後に,接着修復に関してわからないときにいつも快く相談に乗っていただける,東京医科歯科大学の田上順次教授,二階堂徹講師,そして中島正俊講師に感謝いたします.また,当院の歯科衛生士であった鈴木裕子と山本佳奈,現在勤務している志田晃子と横瀬唯の4名にも感謝いたします.彼女らの常日頃の臨床でのサポートがなければ,診療をスムースに行うことは不可能でした.そして,コンポジットレジン材料の認証申請に関してご教授いただいた長瀬喜則氏に感謝いたします.

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