別冊 TMDYB2012 アゴの痛みに対処する 
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1056 習癖行動別冊the Quintessence 「TMD YEAR BOOK 2012」2)習癖行動の概要① 仕事(清掃業)などで作業中に重いものを持ち運びすることが多く,そのたびにつねに「ぎゅっ」と噛みしめている.② 今まで痛みのため奥歯で食事ができなかったので,どこで噛むのか舌で探し押してしまう.3)前医の紹介状の内容傷病名:右下顎部の痛みおよび咬合違和感.症状・経過:3年前よりハルシオン(睡眠障害),ミカルディス(高血圧),サイレースの服用を始める.2010年よりが動揺し,食べ物がつまり,右下顎部の痛みも出始めた. 当院では,X年2月18日に初診来院し,およびポンティック部を除去し症状が楽になったとのことであったが,2~3日後に右下顎部の鈍痛を訴える.カロナールとロキソニンを処方し様子を見ていたが,効果なしとのことなので,SG顆粒処方.服用後,3時間は痛みが消失するが,その後痛みはさらに増幅した.4)主訴(S)①食物を左右でしっかり食べられるようになりたい.②左で食事をすると傷む(右下ブリッジの除去後から).③右下ブリッジ除去後,切断部に舌が触れて傷む.④顎まわりが重く,ガクガクする.しては,非可逆的処置である咬合調整,歯冠修復処置,補綴処置,矯正処置などは選択せず,保存療法を優先させるべきであることは周知のごとくである4,5.保存療法として,スプリント療法,薬物療法,理学療法,認知行動療法,生活習慣指導などがある.とくに認知行動療法や生活習慣指導については,患者自身の日常の習癖や行動様式そのものが顎関節症の症状に深く影響していることは,多くの臨床家がその治療経験から実感していることであろう. 患者の習癖や行動は顎関節症に及ぼす影響には,図2に挙げるようなものが考えられる. 顎関節症に関与する患者の習癖や行動は,顎関節や咀嚼筋に過度な負荷を加えたり,それらの部位の栄養や新陳代謝を阻害するものがある.さらに,痛みに対する閾値を低下させるように働く習癖や行動もこれに含まれている 本稿では,顎関節症状の発症に患者の日頃の習癖や行動が関与していた症例について,その発症の経過,紹介元での対応,そして咬み合わせリエゾン診療科での対応とその結果について解説したい.症例11)患者の概要初診年月日:X年5月17日.年齢:51歳.性別:女性.図2 患者の習癖や行動が顎関節症に及ぼす影響.患者の習癖や行動が顎関節症に及ぼす影響①顎関節症発症のトリガーとなる②顎関節症の症状を増悪させる③顎関節症を永続させる④顎関節症の治療効果発現を阻害する

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