「欠損歯列」の読み方,「欠損補綴」の設計
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section 1 ディスカッションでわかる「欠損歯列」と「欠損補綴」034CHAPTER1 「欠損歯列」と「欠損補綴」とは?ディスカッション インプラント時代の「欠損歯列」と「欠損補綴」の融合をめぐってインプラントで変えられること,変えられないこと【武田】 宮地先生,本多先生のお話しを伺い,痛感することは,やはり補綴治療というのは「欠損歯列」と「欠損補綴」の両輪で考えるべきだということです.これはインプラントが主流の今日でも変わらない普遍的な事項です.それにより,逆にインプラントの本当に価値ある使い方,それと限界も見えてくるのではないでしょうか? たとえばその価値ある使い方の例として図9aを見てください.初診時で咬合支持数4,現存歯数17と咬合崩壊症例です.図9bはその9年後の状態です.インプラントを配置して遊離端欠損をなくし,下顎の「受圧条件」を変えています.それによってパーシャルデンチャーの安定性を高めた症例です.【宮地】 欠損パターンとしてみると「Cummerの分類」でパターン1に戻るようにインプラントを配置する歯列は非常に安定します.この症例の初診時は下顎の「受圧条件」が悪いのですが,インプラントで見かけ上中間欠損になりました. 「加圧因子」とは遊離端欠損の対顎のことですから,遊離端欠損を中間欠損にしたということは,「受圧条件」を改善したということと同時に「加圧因子」を消したということが効果として大きいと思います.遊離端欠損部の「加圧因子」は顎堤を破壊する悪い因子ですが,中間欠損の場合はその対向歯は咬合支持の回復につながるので,よい因子へと逆転します.ですから武田先生がインプラントを両側に入れて,中間欠損に変えたことは欠損歯列にとって,「受圧条件」の改善という,より大きな効果が期待できると思います.【伊藤】 そのとおりですね.ここにインプラントを4本いれてすべて補綴してしまうと受圧環境が逆転してしまう.そうすると上顎の欠損歯列が急速に拡大してしまうことになりますね.【宮地】 下顎を補強しすぎると上下顎のバランスが悪くなるという問題もありますね.【本多】 だから武田先生の設計は,上顎の条件は決してよいとはいえないが,まだ固定式で使っていけるという際に,下顎をインプラントでオーバーデンチャーにし,Kennedyの分類3級にもっていき,後方が沈まない状況をつくって力学的に中間欠損にされておられます.またデンチャーのほうが人工歯の材料の面からも対合歯にもやさしいと思われます.【伊藤】 そういうことを考えるとインプラントを支台歯に使ってパーシャルデンチャーにするという設計はとても有効といえます.【武田】 はい.下顎の遊離端欠損に対する有効な解決法といえます.【伊藤】 しかし,結局パーシャルデンチャーはいやだといって歯科医師も患者もインプラントをいれてしまう….【宮地】 義歯を嫌う大きな原因は,食い込んで痛いのがいやなので,中間欠損のままで維持できれば患者さんに受け入れてもらいやすくなると思います.【伊藤】 そこに本多先生のいう構造力学を満たしたパーシャルデンチャーが入れば非常によい受圧環境ができあがるわけです.【武田】 図10a,bの症例は「受圧条件」のレベルを変えるというところができていなかったためにさらなる欠損をpresenter 宮地建夫,本多正明,武田孝之,伊藤雄策

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