削るう蝕 削らないう蝕
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116Chapter 1 う蝕とはどういう疾患かう考えに基づいてなされなければなりません。ですから極端な表現かもしれませんが、たとえフルカバーすることになってしまっても、きちんと接着処置を施すことがう蝕予防につながるわけです。 もちろんそのような状態になる前に手を打つことが大事ですが、たとえなってしまっても、そこから先のことを考えないことには、いつまでたっても修復をくり返してしまうことになるでしょう。キシリトール摂取後47歳その他の危険因子プラークの蓄積量ブラッシング回数キシリトールLB菌数飲食回数フッ化物緩衝能SM菌数唾液量(ml/min)0012332100黄緑青即青2.0以上1.2~2.00.7~1.2~0.7123123210001回2回3回以上12336回~5回4回3回検査時のSMの状況検査時のSMの状況キシリトール摂取後のSMの状況キシリトール摂取後のSMの状況今里 先ほど伊藤先生は、患者さんが抱く『修復すれば治る』というイメージは歯科医療の鏡だとおっしゃいましたが、やはりわれわれ自身が、『う蝕は単なるう蝕病変ではない』ということを理解することが、そこから脱却するスタート地点になりますよね。林 患者さんを啓発するよりも、まずは私たち歯科医療従事者が変わらなければならない、ということですね。今里 現在の若い歯科医師は、『う蝕がダイナミックな病変である』ということを教育を通じて学んでいるはずなので、今後大きく変わっていく資質は備わっていると思います。一時はたしかに『歯の修理屋さん』を養成してきた側面はありましたが、現在はカリオロジーという学問があり、大学教育でも力を入れていますからね。伊藤 しかし実際は、それを臨床でどう表現するかが、いちばん難しいところなんです。 「こういう欠損があったら、こういう形成をして、こういう修復物を入れなさい」というのは簡単ですが、「このう蝕をどうマネジメントする?」ということになると、どうしたらいいのかわからなくなる。修復しなければいけない場面があるのは間違いないけれど、「その線引きはどうすればいいの?」ということまでは、教育ではなかなか教えきれないところがあると思います。林 残念ながらそこをターゲット2.歯科医療はう蝕にどう向き合うべきか症例1-1-1c カリエスリスク検査結果。う蝕原性細菌数が多く強い攻撃があるにもかかわらず、唾液分泌量が少なく防御がほとんど機能していない。スーパーハイリスクとでもいえるような状況である。検査時はフッ化物を使用し始めていたが、リスク改善のためキシリトールガムを毎食後に噛むことと、飲食回数の減少を指導した。その結果、ミュータンス菌の減少が確認できた。

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