削るう蝕 削らないう蝕
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397Chapter 3 う蝕の診査・診断と介入・非介入の判断林 非破壊的にチェックできる診断機器はすでに普及していますが、期待するほどの成果は上がっていないと私は思います。現状では1回の断面的な測定結果を客観値として信用してしまう傾向がありますが、実は1つの値だけで判断するのは危険であるということが、まだまだ認知されていません。 診断機器に関しても『時間』というファクターが欠かせないと思っているのですが、こちらもなかなか認知されていません。伊藤 私も同意見です。診断機器はあくまでも『前回よりも数値が大きくなったか小さくなったか』という時間軸のなかで評価することに意味があると考えています。今里 本来こういった診断機器は、診療コンセプトをも含んだ一連のパッケージとして普及して初めて活躍できるのですが、日本ではそのなかの一部分だけが取り上げられてしまった感がありますね。伊藤 初期病変の診断においては、何事も『時間のフィルターにかける』ということが欠かせないと思います。 また、初期病変を時間軸で診ていくと、医療の基本である『緻密な視診』と『エックス線写真読影』がきわめて大切であることを実感します。実際、乾燥させるか否かで、病変の見えかたはまったく異なります。忙しい臨床のなかでは、こういった基本的なことはややもすると軽視しがちなので、自分を律して取り組まなければならないと思っています。下顎右側第一大臼歯下顎左側第一大臼歯症例3-1-1d 下顎左右第一大臼歯裂溝の経過。裂溝の着色に対しては注意深く、非破壊的に診査を行い、かつ時間軸のなかで処置方針を決定すべきである。歯の着色は必ずしも活動性の病変を意味しないことを忘れてはいけない。時間軸で診断していくためには、メインテナンスに来院してもらうことが不可欠である。

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