さわる咬合, さわらない咬合
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003 歯科の臨床家にとって,手技(テクニック)を磨くことは必須である.しかし,手技の習得にとらわれ,診断力の習得が後回しになっては,的確な治療は望めない.──治療計画はいくつかあり得るが,診断は1つであるとは,M. アムステルダム先生の有名な言葉である. 習得した手技や術者の力量で,治療計画が異なる可能性もある.習得した技術に固執し,しなくてもよいことまで手をつけてしまうこともある.もちろん術者はよかれと思ってのことであるが,オーバートリートメントになることがある.患者は,診断に基づき治療計画を提示してもらい,メリットやデメリットを理解し,治療方針を選択する権利がある.当然のことだが,術者がメリットやデメリットを理解していなければ,患者に的確に提示はできない.「知らない病気の診断はできない」ごとくである. 筆者が2009年に出版した『臨床咬合補綴治療』では,歯冠修復治療をするならば,どのような配慮が必要か,を書かせていただいた.「さわる」ならば(咬合治療・修復治療をするならば……),である.しかし,臨床では「さわらない」(咬合治療まですべきではない)こともある.さわらないで問題が解決するならば,生体への侵襲も少なく,メリットも多い.といっても,さわらないことだけがよいとは限らない.なんだか,わかったような? わからないような? と思われるかもしれない. 「咬合をさわるべきか?さわらざるべきか?」の判断は,診断如何による.本書を読み進めていただくと,何を言わんや……がわかっていただけると確信している. 2012年12月 今井俊広・今井真弓プロローグ

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