天然歯保存へのチャレンジ&スタディグループのインプラント教育
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28会員発表はじめに インプラント治療における審美性の達成は、いまだインプラント学における重要なテーマでありアドバンスな治療領域として捉えられている。特に審美的な基準からインプラント修復物に求められる軟組織の形態は、①反対側同名歯または歯列と調和した唇側歯頚ライン②周囲と調和した完全な乳頭組織③根が直下に存在しているような唇側歯肉の凸面(カントゥア)の再現である。なかでも外科手技やインプラントのポジションの不備により容易に喪失してしまう乳頭を完全な形で保存・再建することは簡単ではないと臨床家は理解している。Papilla Index Score(PIS)を提唱したJemt1)は、インプラント単独歯欠損症例において、治療終了時に完全な乳頭が再現されたケースは10%、1~3年のフォローアップにおいては58%であったとしている。また、Wangら2)は、単独歯欠損抜歯即時埋入症例において、1年のフォローアップ時点でブラックトライアングルが64.3%に見られた、としている。 これらから、インプラント治療においては、比較的プロトコールが固まったとされている単独歯欠損症例においてさえも、術後に乳頭を完全な状態で再現することの難しさが理解できる。 そこで、さまざまな乳頭保存、再建のための術式が考案されているが、そのなかで今回インプラントに隣接する乳頭の外科的な造成の可能性についてこの稿のなかで検討を加えてみたいと考えている。とくにinter proximalな、すなわちインプラント間、インプラント-天然歯間に存在する乳頭について水平的・垂直的な造成をコンビネーションで行う術式の臨床結果において、その有効性を考察する。インプラント周囲の乳頭再建、再生術 乳頭の再生、再建には、種々の方法が考案され、そのほとんどがケースレポートとして論文掲載されている。したがって残念ながら、エビデンスレベルは低いというのが現状である。Wangら3)は、インプラント周囲乳頭組織の保存、再建術に関して外科的、非外科的術式に大別している。外科的な手法としては硬組織のマネージメント、軟組織のマネージメント、フラップレスサージェリー、フラップデザイン、リッジプリザベーションなどを挙げており、対して非外科的な手法として補綴、修復治療(コンタクトのリシェープ、プロビショナルクラウンによるコントロールなど)やインプラントに隣接する歯牙の矯正的な挺出などのテクニックを挙げている。 外科的な術式による乳頭再建術審美修復治療のためのインプラント周囲軟組織の形成手術―インプラント‐天然歯間、インプラント間乳頭の再建―1990年 九州歯科大学 卒業1994年 京都市西京区 医療法人洛歯会 中田歯科クリニック 設立2009年 京都市中京区 医療法人洛歯会 デンタルクリニックTAKANNA設立CID(center of implant dentistry)理事、NGSC(New Generation Study Club)副会長中田 光太郎論文手技Palacci(1995)4)Semilunar pedicle rotation flapPriceとPrice(1999)5)CTGeL-Salam eL-Askary(2000)6)inter-implant papillary inserteL-Salam eL-Askary(2000)6)Titanium papillary insertGrossberg(2001)7)Modification of Palacci techniqueNemcovskyら(2000)8)U-shaped incisionTintiとBenfenati(2002)9)Ramp mattress sutureAzziら(2002)10)TunnelingAutyとSiddiqui(1999)11)Tissue-punch techniqueMischら(2004)12)Split-finger techniqueGomez-Roman(2001)13)Limited flap to protect papillaFlanagan D(2002)14)Wing flap design表1 外科的な術式による乳頭再建術

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