天然歯保存へのチャレンジ&スタディグループのインプラント教育
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48はじめに 歯科医学の最重要課題は、天然歯を保存することにある。歯周治療に対する関心が低かったころには、天然歯を安易に抜去して補綴物に置き換えることを抵抗なく行っていた。多数歯欠損補綴の症例では、補綴処置は残存歯数などの諸条件(歯周組織の状態、歯列弓における配置・対向関係、動揺度)、咬合支持の有無、上下顎の咬合関係、欠損部歯槽堤の状態などにより、処置の選択肢は広汎かつ複雑である。残存歯の保存か抜歯の基準は、歯周支持組織の破壊の程度によるものではなく、むしろ歯科医師が選択する欠損補綴のデザインによって決まることが多いため、安易なインプラントの利用によって抜歯の基準が低くなり、欠損補綴における選択肢の幅が狭くなる傾向が見られ、実際には抜去する必要のない歯が多数抜歯されていることは残念である。1.重度の歯周疾患罹患歯の保存 歯周治療の目的は、歯周疾患を改善し、天然歯を保存することである。そのため、歯の維持が、歯周治療の真のエンドポイントとなる(Hujoel & DeRoun, 1995、Pageら, 1995、Fardalら, 2004)1~3)。そして、歯周治療後の歯の喪失数は、治療の成功あるいは失敗を判定するのにもっとも適切な指標である(Van der Velden & Schoo, 1997)4)。 また、臨床的には歯周治療が成功したか否かの判定は、天然歯を保存させることの時間で判断することになるが、多少疾病の徴候が存続していても、必ずしも治療の失敗を意味するものではない。歯周治療のメインテナンスは一生続けなければならない。たとえ進行した歯周疾患であっても、歯周治療を受け、定期的にメインテナンスを行っている患者では、ほとんどの歯が維持可能であるこ重度な歯周疾患患者の歯の保存佐藤直志(佐藤直志歯科医院)●略歴1974年 岩手医科大学歯学部 卒業1975年~ 1982年 岩手医科大学歯学部第2保存(歯周科)1977年 アイオワ大学歯学部歯周科 留学(米国)1982年 秋田県湯沢市で開業2009年 岩手医科大学歯学部 非常勤講師

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