天然歯保存へのチャレンジ&スタディグループのインプラント教育
7/8

116はじめに 私たちが歯科治療を行う際に考慮すべき重要な点は以下の5項目に集約されると考えている。 ・患者の希望に応える ・機能的、審美的な歯列を回復し維持する ・天然歯を可及的に保存する ・歯髄を可及的に保存する ・歯質を可及的に保存する これらの課題を解決するためにさまざまな治療オプションが応用されるが、インプラント治療もそのなかの一つの重要なオプションであり、適切に応用された場合は、咬合支持の確立、天然歯の負担軽減、支台歯形成による歯質削除の回避などをはじめ、多くのメリットを期待することができる。天然歯保存のために 重度の歯周病に罹患した歯であっても的確な診断と治療によって歯の保存が可能となりうる。初診時のX線写真のみで安易に抜歯の判断をすることは避けなければいけない。炎症の強い状態では骨の脱ミネラル化が起こり、X線透過性が亢進していることも多く、このような場合、適切な歯周基本治療により再ミネラル化が起こってX線診断をより正確に行うことができるようになる。ゆえに、徹底した歯周基本治療が重要となる。また症例1のように再生療法に重要な役割を果たす骨欠損周囲の骨壁が薄い場合は、デンタルX線では表現されないためホープレスと診断してしまい、再生のチャンスを見逃してしまう可能性があることにも注意が必要である1)(症例1‐a)。 症例1は歯周病が進行し骨欠損が根尖近くにまで及んでおり、保存が困難と思われるケースであるが、フラップを翻転すると、隣接面骨頂から骨欠損底の骨欠損深さ11mmのうち頬側で6mm、舌側で7mmの骨壁が頬側と舌側に存在することが確認できた。骨欠損のうち根尖側半分程度は3壁性の骨欠損形態となり、再生療法にとって有利な条件であることがわかる(症例1‐b、c)。 これらの骨壁は薄いため二次元透過像であるデンタルX線写真では確認できないが、CBCTを用いれば術前に診断が可能となる2)。再生療法後28ヵ月、矯正開始から13ヵ月後の状態を観察すると、5歯周組織は矯正治療によって影響を受けることなく安定していることが確認できる(症例1‐d、e)。 このように保存困難と思われる歯であっても再生療法インプラント治療におけるPriority―可及的な天然歯、歯質保存のために―5-D Japan北島 一(北島歯科医院)藍 浩之(あい歯科ペリオ・インプラントセンター)吉田健二(福西歯科クリニック)

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です