イラストで語る 歯科医学最前線
5/8

The Illustrated Bioscience間葉系幹細胞肥大軟骨細胞筋管間質細胞腱・靱帯線維芽細胞含脂肪細胞,真皮,その他骨細胞軟骨筋肉骨髄腱・靱帯結合組織骨図1 間葉系幹細胞は骨,軟骨,筋肉,骨髄,腱,靱帯,結合組織などのさまざまな間葉系細胞,組織に分化することができる.①臼歯部欠損を改善したいが,骨量が不足している.②局所麻酔下で骨髄液を採取.間葉系幹細胞を増殖させ,骨芽細胞に分化するよう誘導する.③移植術前に血液を採取し,PRPを調整する.図3 歯周炎およびインプラント治療のための歯槽骨造成術に注入型培養骨を応用した臨床例.図2 上顎臼歯部歯槽堤萎縮症に対する上顎洞底挙上術とインプラント同時埋入術に注入型培養骨を応用した臨床プロトコール. 「注入型培養骨」は,骨髄などに存在して多分化能を有する間葉系幹細胞(MSCs)と,トロンビンによりさまざまな生理活性物質(増殖因子)を放出する血小板を濃縮した多血小板血漿(PRP)を混合したものである.その作用により細胞を活性化することで,より活発に骨組織を再生する.自己の材料を用いて再生されるオーダーメイド医療のため,安全性も高く,さらに注入型であるため複雑な形態を呈する歯科領域のさまざまな疾患に広く応用できる. ヒトの体は,細胞が集まり,組織・器官となり,その集合体として人体が形成される.つまり,人体は細胞を基本単位として構成されているともいえる.組織が欠損・損傷されると,まず細胞により修復が起こるのは,抜歯窩の治癒においての線維芽細胞が遊走して肉芽組織が形成される過程を考えると理解しやすい.一方,年齢とともに細胞の力が減退すると老化が起こる.そこで,若々しい幹細胞による力で,組織修復・活性化を起こそうとするものが,まさにこの再生医療である.再生医療とは再生能を有する「幹細胞」,分化誘導を促進する「生理活性物質」,その「足場」という3要素により組織再生を行う医療なのである. 1.生きた幹細胞による再生医療 主役が幹細胞である「注入型培養骨」に用いる間葉系幹細胞は,さまざまな間葉系細胞・組織(骨・軟骨・神経・筋・歯周組織など)に分化することができる(図1)1.培養骨は患者に応じた,自己の生きた幹細胞・多血小板血漿(PRP)を混合して移植するオーダーメイド医療であるため,必要とされる組織を効果的に再生でき,胚性幹細胞における倫理的および免疫拒絶などの問題は回避される.この幹細胞を保存するバンキングシステムによりさまざまな全身疾患の治療にも応用可能である.また,幹細胞の活性・能力を最大限に引き出すために,PRPの生理活性物質を応用している.この培養骨はババロアのような堅さのゲル状で注入できるため,形態付与性・操作性にすぐれ,歯槽骨・顎骨再生に適している.2.培養骨の骨再生過程 注入型培養骨の臨床応用を前に,基礎研究において有効性・安全性を確認した.移植幹細胞をGFP(緑色蛍光タンパク)遺伝子導入したウイルスにてマーキングし,細胞のはたらきを検討した結果,骨芽細胞のライニング(裏層)・骨細胞への成熟・層板骨形成といった骨再生過32

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です