イラストで語る 歯科医学最前線
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abc翼状突起翼口蓋窩上顎洞上顎洞後部骨柱98The Illustrated Clinical Science上顎洞口蓋側頬側後方前方fixturefixture翼突窩 「上顎結節」の後部は薄い皮質骨でおおわれているが,後下部内方は「口蓋骨」と「蝶形骨翼状突起」が付着していて一定量の骨梁を確保できるため,インプラント施術の対象部位となりうる.上顎骨臼歯部へのインプラントは,上顎結節部を利用して後方の「翼状突起」方向へ埋入する.しかしその後方には「翼突静脈叢」をはじめとする脈管・神経などが分布しており,インプラント体の穿孔による脈管・神経の損傷には十分な注意が必要である. 上顎結節部の後方には「翼口蓋窩」が存在する.「翼口蓋窩」は神経系の大きなターミナル駅で,頭蓋腔からの神経,翼突管からの神経などが交差合流する.さらには動脈の多くの分枝,静脈では「翼突(筋)静脈叢」という血管網がネット状に分布している.それだけではない.内側翼突筋,外側翼突筋,頬筋など,咀嚼・嚥下機能にとって重要な筋群の付着部も近い.患者の骨形態を的確に診査し,上顎結節部後方への偶発症を防止しなければならない. 歯を失うと,骨量の減少・骨質の菲薄化が急速に進むため,上顎骨へのインプラント施術時には十分な考慮が必要である.とくに臼歯部では,骨量の確保が困難であり,種々の工夫がなされている.そのため近年,上顎結節の後部組織がインプラント対象部位として注目されている(図1). 図2はインプラントを理想的な位置より深く,より後方へ埋入してしまった場合を想定した標本で,皮質骨を除去して骨内部を観察したものである.この場合,インプラントの先端が上顎骨の「後部骨壁」を破壊し,「翼状突起部」まで達している.ここでは「後上歯槽動脈」の損傷と上顎神経の挫滅が偶発症として考えられる.1.上顎結節部の神経の走行 「翼口蓋窩」で,上顎神経の本幹より「後上歯槽枝」が起こる.眼窩下神経が「翼口蓋窩」上部を横走中,後2/3で,2~4本で起こる.眼窩下神経は起始後,下方または前下方に向かい,上顎骨後壁に沿って経過する.この経過の途中で分岐し,上顎結節上付近にある「歯槽孔」にむかう.そして「上顎結節」,最後臼歯の後上部,「眼窩下溝」入り口の下方にある5~8個前後の「歯槽孔」より骨中に入る.骨中に入った神経の一部は,主として大臼歯,一部小臼歯の歯ならびに歯肉にも分布する.なお,「後上歯槽枝」が「歯槽孔」に入る前に分かれた枝が,上顎骨面上をさらに下走し,上顎大臼歯頬側歯肉と頬粘膜の一部に分布する.図1 上顎結節部へのインプラント.a:歯を喪失して歯槽突起が大きく吸収しても,「上顎結節」部の海面骨はある程度確保されるため,インプラント埋入の対象部位となる.b:上顎結節部に埋入されたインプラント(エックス線像).c:インプラント体中央部における水平断像(エックス線像).上顎洞

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