垂直歯根破折歯を救え!
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10今、なぜ垂直歯根破折歯への対応か?―予防・加齢とともに増加傾向に―PROLOGUE抜歯の原因をつくらないことから始めたい 歯および口腔の健康を保つことは、単に食物を咀嚼するという点からだけでなく、食事や会話を楽しむなど、豊かな人生を送るための基礎となるものである。わが国は平均寿命が80歳を超え、世界における長寿先進国である。日本歯科医師会では8020運動を展開中であるが、8020を達成している高齢者は増加傾向にあるもののいまだ38.3%(平成23年歯科疾患実態調査)であり、今後さらに達成率の向上が求められる。 高齢者において歯を残すためには、抜歯の原因となるう蝕や歯周病の発症・進行を防ぐための口腔の健康管理が重要である。歯根破折による歯の喪失は増加傾向に 口腔ケアに対する意識が高まってきた今日、う蝕、歯周病によって歯を失うリスクが少なくなる一方、歯根破折による歯の喪失が注目されている。 最近の調査では全国の歯科医院における抜歯理由の約11%が歯根破折によるものと報告されている1。 とくに破折によって抜歯に至るのは生活歯に比べて、失活歯の割合が高い。Axelssonら2は、徹底したメインテナンスを行った患者についての30年後の歯の喪失について調査している。その結果、歯を失った理由は歯根破折がもっとも多く、その中でも、根管治療歯が半数以上を占め、メタルコアやスクリューピンによって支台築造が施されていた(図A)。 本調査結果から、徹底的なメインテナンスを行っても歯根破折による歯の喪失は防ぐことができないことを示唆している。歯根破折予防の一歩はMIで歯髄を守ること このように、歯髄の喪失は歯根破折の出発点といっても過言ではなく、歯髄を守ることがもっとも重要な歯根破折の予防法である。 歯をできるだけ削らずに保存するというMI(ミニマルインターベンション)に関する声明が、2002年にFDIから発表され、広く臨床家に受け入れられている3。 わが国においては、2009年に「MIの理念に基づくう蝕治療ガイドライン」(日本歯科保存学会編)4も発表され、MIの重要性が再認識されている。しかも、コンポジットレジン修復法は、う蝕治療のみならず、歯の欠損にも応用可能であり、高齢者によく見られるような生活歯の破折などにも対応できる5。 生活歯の破折は、主にエナメル質の疲労によるクラックの伸展にともなって生じるが、無髄歯の破折と比べれば重篤なものが比較的少ない(図B)。生活歯の破折を放置せずにコンポジットレジン修復すればより重篤な破折を回避できる。垂直歯根破折した症例。メタルコアにより築造されている。図Aメタルコアやスクリューピンにより支台築造された歯に破折が多い

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