垂直歯根破折歯を救え!
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11図B図Cメタルコアが歯根破折を引き起こす 実際に歯根破折を生じた症例について、その原因を特定するのは困難な場合が多く、いくつかの原因が複合的に影響して破折に至ったものが大半であろう。 しかし歯根破折の発生には、何らかの外力が加わることによる亀裂が生じ、それが破折線となって歯根破折に至るプロセスをたどる。 従来、根管治療後に日常的に行われてきたメタルコアやスクリューピンを用いた支台築造が引き金になって歯根破折を生じる危険性については多くの報告がある6。これは根管治療歯においては、これまで根管治療後の支台築造のためのポスト孔の形成によって歯質が菲薄になり、さらに鋳造ポストを挿入することによって応力がポスト先端に集中して、歯根破折を起こすためである。 これは医原性の歯根破折といってもよく、歯根破折を防ぐための支台築造への発想の転換が必要である。 最近では、根管治療歯に対してもコンポジットレジン修復の応用が拡大しつつあるが、直接コンポジットレジン修復が困難なケースについては、レジンコアによる支台築造が選択されている。レジンコアは最近の進歩著しい象牙質接着システムを応用して、根管治療後の残存象牙質に対して接着によってレジンコアを象牙質に接着させて一体化させる方法である。レジンコアの利点は、コア部を接着によって保持できるために、メタルコアのように深いポスト孔を形成する必要がなく、歯質保存的であることが挙げられる(図C)7。 さらにレジンコアに使用するコンポジットレジン材料の弾性率は象牙質と近似しているため、咬合力が比較的分散しやすく、破折しても比較的局所的な破折にとどまり、そ生活歯の破折症例。コンポジットレジンによって修復した。コンポジットレジンによる支台築造。垂直歯根破折を生じにくい。の後の再修復が可能である。Ferrariら9は、ファイバーポストを使用した支台築造に関する4年の臨床評価において、ファイバーポストによる支台築造では歯根破折を避けることができたと報告している。したがって、レジンコアの普及にともなって、将来的には垂直歯根破折の症例は大幅に減少することが期待される。歯根破折に対する接着を用いた対応 歯根破折に至った症例においても、接着を用いて適切に対応し、歯の延命につなげることが本編の趣旨である。しかし、ここで特記すべきは、接着再植を行って保存した場合、どのような支台築造と歯冠修復を行うかについての確証はないという現状である。垂直歯根破折した歯根どうしを接着させた場合、咬合力がどのように歯根に加わるのかについては、健全な歯根の場合とはまったく異なり、臨床ケースによってさまざまである。さらに保存に成功した場合においても再び歯根破折を生じてしまった場合、つぎに抜歯となるリスクはきわめて高いであろう。歯根の菲薄化という問題はあるものの、メタルコアにおけるポストが長いほうがポスト先端部への応力がかかりにくいという議論があるのも事実である9。このような状況を考慮すれば、直接・間接法を含めて各症例に応じてより確実に行える方法を探索するというのが現実的なアプローチであろう。接着再植後の修復方法については今後さらなる検討が必要である。 よって本書で述べる治療方法を行う場合には、患者に対するインフォームドコンセントを十分行い、納得してもらうこと、あくまでも延命治療にすぎないことを理解してもらうことが不可欠である。生活歯の破折。迅速な対応が歯根破折の予防につながる

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