口腔外科ハンドマニュアル'13
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DENTAL SURGERY UP-TO DATEChapter1-152 顎顔面手術の術後や種々な原因により欠損した顎顔面の再建に対しデンタルインプラントを用いることは,機能の改善や審美性の点からきわめて有用な手段とされている. とくに腫瘍,外傷,炎症,先天奇形など口腔外科領域の代表的疾患に対してのデンタルインプラントの導入は,咀嚼機能,構音機能はもとより審美的にもすぐれ,精神・心理面での回復によるQOLの向上により,早期の社会復帰が可能とされている. なかでも口腔がんの場合,歯肉歯槽はもとより,舌,口底,頬粘膜,硬口蓋いずれも進展範囲によってはやむなく顎骨を切除することが多く,残存骨,移植骨のいずれかにインプラントを埋入することがスタンダードな治療法となっている. 一方,眼窩,外鼻,耳介などの顔面の実質欠損に対しても,デンタルインプラントを支持として人工物で補填修復する顔面エピテーゼが,審美的にはむしろ形成外科的手技よりすぐれているとされている. 他の口腔外科疾患でも唇顎口蓋裂では顎裂部に,特集1:インプラント治療を基本から徹底的に見直す巻頭アトラス 最新の外科潮流を知ろう朝波惣一郎1/河奈裕正2/森 悟3/鍋島弘充3/今井 裕41 国際医療福祉大学三田病院歯科口腔外科 連絡先:〒108-8329 東京都港区三田1-4-32 慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科学教室 連絡先:〒160-8582 東京都新宿区信濃町35番地3 愛知学院大学歯学部顎口腔外科学講座 連絡先:〒464-8651 愛知県名古屋市千種区末盛通2-114 獨協医科大学医学部口腔外科学講座 連絡先:〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880Maxillofacial Reconstruction with Osseointegrated ImplantsSoichiro Asanami1, Hiromasa Kawana2, Satoru Mori3, Hiromitsu Nabeshima3, Yutaka Imai4 1 Department of Oral Surgery, International University of Health and Welfare Mita Hospitaladdress: 1-4-3, Mita, Minato-ku, Tokyo 108-83292 Department of Dentistry and Oral Surgery, School of Medicine, Keio Universityaddress: 35Shinanomachi, Shinjuku-ku, Tokyo 160-85823 Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Aichi-Gakuin Universityaddress: 2-11, Suemori-dori, Chikusa-ku, Nagoya-shi, Aichi 464-86514 Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Dokkyo Medical University, School of Medicineaddress: 880, Kitakobayashi, Mibu-cho, Shimotsuga-gun, Tochigi 321-0293口腔外科疾患に対するインプラントの応用外傷では前歯部などの大きな歯槽骨欠損に対してデンタルインプラントを用いることにより,構音機能はもとより審美的にも患者の満足が高い. 2012年4月の診療報酬改定で先進医療から広範囲顎骨支持型装置,すなわちデンタルインプラントによる顎骨再建が保険導入された.しかしながら,適応範囲は腫瘍,顎骨骨髄炎,外傷などに限られている.本稿では,腫瘍,顎裂,外傷の患者に対しインプラントを応用した症例を供覧するが,今後,これらの疾患以外の骨移植後の顎裂や顔面エピテーゼなどに対しても保険適応範囲を拡大し,患者の咬合の再構築による咀嚼機能や形態の回復を望みたい.腫瘍ATLASATLASATLAS 顎骨に発生した腫瘍は良性であっても大きなもの,悪性では小さなものでも健常部を含めて切除するので顎骨の欠損が大きくなることが多々ある(図1).そのため,外科療法の後の機能障害や審美障害は患

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