口腔外科ハンドマニュアル'13
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DENTAL SURGERY UP-TO DATEChapter1-1DENTAL SURGERY UP-TO DATEChapter1-161 歯科インプラント治療は,口腔機能を回復する欠損補綴に対する治療の1つのオプションとして定着し,普及してきている.すでに多くの研究から,インプラント治療後の10年後生存率(一定期間,口腔内に残存したインプラントの割合)は90%以上であることが報告1~3されていることから,他の機能回復処置と比較してもすぐれた治療法であることがわかっている. 一方で,この歯科インプラント治療後の成功の基準は時代とともに変化してきている.1978年のNIHハーバード会議での成功の基準は,インプラント体自体の動揺やインプラント体周囲の比較的大きな骨吸収を許容していた.しかし,1998年のトロント会議において,現在引用されている成功の基準に改められた.その基準とは,患者,歯科医師ともに「満足する機能的,審美的な上部構造」を支持している.さらに,「インプラントに起因する痛み,不快感,知覚の変化,感染などがない」「非連結状態のインプラントに動揺がない」「機能開始11年以降のインプラント周囲の垂直的骨吸収量が0.2mm / 年以下である」ことが示されている4.特集1:インプラント治療を基本から徹底的に見直す巻頭アトラス 最新の外科潮流を知ろう しかし,実際にはこのインプラント治療の一部に,併発症を起こし,失敗する症例もある. 患者にとって歯科インプラント治療は,長い治療期間,高額な自費診療であることからも,その医療に対する期待も高いといえ,併発症に対してわれわれ歯科医師は真摯に対応することが望まれている.インプラント治療後の併発症ATLASATLASATLAS インプラント治療後の失敗については,その時期や原因から分類されている.まず,インプラント失敗の時期による用語を表1に示す(Misch CE, 2005)5.外科処置直後に発生する失敗の多くは外科的手技の問題や術中後の感染に起因する.インプラント周囲炎は,intermediate failure,late failure,あるいはlong-term failureの範疇に属する.また,Espositoらのインプラント失敗の分類(1998)6(表2)では,インプラント周囲炎は晩期失敗(late or secondary failure;after loading)の範疇に入る.インプラント治療後の併発症を調査した日本歯周病学会の報告7(図1)では,インプラント周囲炎がもっとも発症頻度辰巳順一/申 基喆明海大学歯学部口腔生物再生医工学講座歯周病学分野連絡先:〒350‐0283 埼玉県坂戸市けやき台1‐1Probrems and Its Treatment of Peri-ImplantitisJunichi Tatsumi / Kitetsu ShinDivision of Periodontology, Department of Oral Biology and Tissue Engineering, Meikai University School of Dentistryaddress:1-1, Keyakidai, Sakado-shi, Saitama 350-0283インプラント周囲炎の問題とその対応

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