口腔外科ハンドマニュアル'13
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DENTAL SURGERY UP-TO DATEChapter1-284特集2:インプラントによる神経損傷をあらためて考える[症例3]小範囲部分断裂neurotmesis非手術症例 67歳,女性(図26~28,表5)図26 CT所見.インプラント体は下顎管を貫いているように見える.V-gain:2μVDIV:1ms最大伝導速度:39.1m/sec損傷1か月後損傷2か月後損傷3か月後最大伝導速度:34.8m/sec最大伝導速度:47.7m/sec図28 下歯槽神経SNAP.初診時は波形がほとんど認められないのに対し,損傷3か月後には多峰性の大きな振幅の波形が認められ,回復傾向にある.埋入時の小範囲の部分損傷と診断.図27 術中所見および摘出したインプラント体.表5 主観的検査法の経時的変化.SW知覚テストではほぼ正常に回復しているが,自覚症状では錯感覚の状態である.健側患側術前1か月2か月3か月4か月SW知覚テスト下唇枝1.653.842.361.651.652.36口角枝2.364.171.651.651.651.65オトガイ枝1.652.361.651.651.651.65二点識別検査(mm)下唇枝13mm37mm4mm5mm10mm5mmオトガイ枝9mm32mm9mm5mm10mm5mm定性的冷覚検査++++++温覚検査+----+痛覚検査4g-6g6g4g6g自覚症状知覚脱失+異感覚+++錯感覚++知覚鈍麻異常痛覚痛覚過敏アロディニア[症例3]小範囲部分断裂neurotmesis非手術症例 患者は67歳,女性.他院で抜歯後インプラント即時埋入時に下顎骨内に迷入.術直後より左側下唇,オトガイ部のしびれ,疼痛,術後出血を認めた.埋入3日後に来院.星状神経節ブロック(SGB)開始とともにビタミンB12内服ならびに1週間のステロイド(プレドニン®10mg/日)内服を開始した. CTにて下顎管を貫くようにインプラント体が下顎骨深部に迷入していたため,1週後に局所麻酔下にて摘出した(図26,27). 摘出前後の主観的検査(SW知覚テスト,痛覚,二点識別閾,温冷覚検査)および客観的検査(下歯槽神経活動電位)を計測した結果,摘出2か月後にはSW知覚テストではほぼ正常範囲内に回復したが,SNAPでは回復が遅れていたため3か月目に再検した.SNAPにおいてもかなり回復傾向が認められたため,損傷程度は軽度でインプラント埋入時の小範囲な部分断裂(neurotmesis)と診断し,神経修復手術を行うほうがかえって症状の悪化を招くと判断し,神経修復手術は行わないこととした(図28,表5).

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