口腔外科ハンドマニュアル'13
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DENTAL SURGERY UP-TO DATEChapter1-3114 顎関節症は,第10回日本口腔科学会総会(名古屋:1956)において上野 正らによる一般演題「顎関節症の研究(第1報)臨床的所見」の発表に始まる1,2.その後の関節内病態の解明にともない,現在,顎関節症の病態は,咀嚼筋障害,関節包・靱帯障害,関節円板障害,退行性関節障害(変形性関節症)に大別されている3. 今日までの顎関節症に関する治療法の大きな転換点は,2回あったと考えられる.すなわち,1回目は顎関節症の病態として顎関節円板の転位が明らかにされた時点4,5であり,2回目は転位した関節円板による各種病態の自然経過が自己限定的(self-limiting)であり6,治療による転位円板の制御が難しいばかりでなく,関節円板の転位と臨床症状,とくに痛みとは必ずしも関連しないことが判明した時点7,8と考えられるであろう. 外科的治療は,第一の転換点前後,とくに米国を中心に転位関節円板に対する関節開放手術が爆発的に隆盛し,それが低侵襲の顎関節鏡手術に変わり,さらに第二の転換点の到来にともない,さらに低侵襲な関節洗浄療法に推移してきたのが概略である.特集3:顎関節疾患に対する外科的アプローチ巻頭アトラス 最新の外科潮流を知ろうなお,顎関節症の外科的治療法全般についての概要はすでに総説として公表した9ので,本稿ではふれない.関節開放手術の適応症ATLASATLASATLAS 顎関節症に対する手術療法に関しては系統的な適応基準は明らかとなっていない.すなわち,関節開放手術に関するランダム化比較試験,システマティック・レビューおよびメタ分析はなく,効果を裏づける根拠はない. 理論的な適応病態は,関節円板障害および退行性関節障害(変形性関節症)の一部であり,臨床的には長期にわたる開口障害により日常生活に支障が生じている症例で,かつ関節洗浄療法および関節鏡視下手術が奏功しない症例に適応されているのが現状である. しかし,関節開放手術は顎関節手術の基本であり,関節洗浄療法および関節鏡視下手術を実施するにあたっても,関節腔内における予期せぬ損傷や器具の破損等に際しては,安全かつ速やかな関節開放手技柴田考典北海道医療大学歯学部生体機能・病態学系組織再建口腔外科学分野連絡先:〒061‐0293 北海道石狩郡当別町字金沢1757Open Arthroplasty for TMJ arthrosisTakanori ShibataDivision of Reconstructive Surgery for Oral and Maxillofacial Region, Department of Human Biology and Pathophysiology, School of Dentistry, Health Science University of Hokkaidoaddress:1757, Kanazawa, Toubetsu-cho, Ishikari-gun, Hokkaido 061-0293顎関節症における関節開放手術

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