基礎から臨床がわかる再生歯科
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CHAPTER 2122基礎から臨床がわかる 再生歯科知っておきたい治癒・再生を妨げない外科の基本 10感染コントロール 臨床再生療法を失敗しないために SBO①感染とはどういう状態であるか?②感染はどのような状況で,どこに起こりやすいか?③どのようにして術後感染のリスクを減らすか?④術後感染した場合の対処法は?再生療法は,感染しやすい手術 あらゆる手術に術後感染のリスクがあります.とくに口腔内には常在菌叢があり,いかに消毒しようとも完全な無菌状態での手術にはなり得ません.このため,口腔内の手術は術後感染をきたしやすい手術といえます. なかでもインプラント関連手術をはじめとする歯科の再生療法は,インプラント体,骨補填材,メンブレン(遮断膜),メンブレンや移植骨を固定するためのスクリューなどの異物が組織内に埋め込まれることが多く,治癒が遅れたり感染するリスクがより高い手術といえます(Fig 1~8).再生療法では,組織の条件がよくないところや,組織量が不足しているところに組織を増生する目的で手術が行われるので,術後にいったん感染を起こすと局所の条件は術前の状態以上4444444に悪化してしまいます.この点からも術後感染は絶対に避けたいところです.感染とはどういう状態か? 感染とは,創部に付着した細菌が増殖し,創や周囲組織内に侵入して症状を呈した状態をいいます.細菌が創面に付着して増殖していても,創や周囲組織に侵入しておらず症状がない状態は汚染といい,感染とは区別されます.細菌がいることと,感染を起こしていることは異なるのです.開放創からはつねに細菌が検出されます.この創は汚染されてはいますが,感染した状態ではありません.通常,開放創は感染することなく二次治癒します.感染はどこに,なぜ起こるのか? 感染の主な原因は,血流不足と異物の存在です.血流が不足すると,①免疫能(細胞性免疫,体液性免疫)がはたらかない,②酸素不足になる,③抗菌薬が届かない,といった状態に陥り,微生物が増殖しやすくなります.血腫,リンパ液や組織液などの貯留部や,死腔(内部に何もない空っぽのスペース.やがて組織液が溜まってくる)は,内部に血液の循環がないという意味で血流の不足した状態であり,感染しやすくなります.感染を防ぐためには十分な血流があることが重要です. また,異物があると異物排除の反応としての炎症が長期化し,感染に移行しやすくなります.血腫や死腔は内部に血流がないという意味では一種の異物でもありますから,閉創の際には血腫や死腔をつくらないように,また異物を残さないようにすることが大切です. 再生療法は,生体親和性がよい材質であるとはいえ異物を創内に留置する手術ですから,切開やフラップの剥離・挙上・縫合の際に十分な血流を確保することが重要であることを理解しておかなくてはなりません.感染したらどのような症状がでるのか?(point 1) 術後には必ず侵襲に対する生体の反応としての腫れ・傷み・発赤・熱感などの炎症症状が生じますが,通常は術後数日目にピークに達したあとは徐々に消退し,1週間程度で術前の状態に回復します. 感染を起こすと,この炎症症状が悪化したり,長引い

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