アレキサンダーディシプリン 長期安定性
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3 • 矯正歯科においてとくに考慮すべきこと40abcde矯正治療中に起こりうる 歯周の問題 矯正治療中に生じるもっとも一般的な歯周の問題は 歯肉炎である. 患者は矯正装置を装着されている間は歯面を清潔に保つことができないために形成されるプラークや歯石の蓄積の結果である. ボンディングの際に使用される酸処理法もまた, 適切な注意が払われていなければ, 歯肉組織の炎症を生じる. 長期にわたる歯肉炎は, 矯正装置を装着している間に, 軟組織の肥厚へと進行する. 歯周の問題に関するほかの医原性の原因としては, 不適合な帯冠, 適切に除去されていない余剰セメント, 組織を圧迫しているエラスティックスの装着などがある. 歯周膿瘍は, 適合が良くない装置やそれらの周りの不潔領域の結果として形成される. 矯正治療を行っている間に歯は移動するので, 外傷性咬合が生じ, 歯周疾患を惹起するかもしれない. 矯正治療が継続するにつれ, 進行性の歯周病が発現し, 付着歯肉の退縮という結果になりうる. これは, コントロールされない組織炎症の結果である. 不適切な矯正治療はまた, その要因になりうる. 矯正力が強すぎる場合や, 歯の移動が速すぎる場合には, 永久的な歯周の問題となってしまう.矯正治療の隠れた傷跡の1つが 歯根吸収である(図3-2). この現象に関して多くの研究が行われているが, 実際に何がこの状態を引き起こすかについては, まだはっきりとわかっていない. 矯正治療中に起こる可能性のあるこういったすべての問題を考慮して, 歯の移動を始めるときの力は, できるかぎり穏やかにすべきである. 図3-1 口腔衛生状態の悪い患者. (a~c)口腔内写真. (d, e)咬合面観.図3-2 パノラマエックス線写真で歯根吸収が認められる.

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