アレキサンダーディシプリン 長期安定性
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544 • 前歯部のトルクコントロールabc98.5T1 : 98.598.5T1 : 98.5T2 : 109.5109.5T2109.598.5T2101.5T1 : 98.5T2 : 109.5T3 : 101.5T4 : 成長の終了時(治療後少なくとも5年経過)T3 + T4による前方への力が下顎小臼歯上にかかり, 下顎歯槽部を前方に移動するため, 結果として下顎切歯の前方傾斜を生じたと報告している6. サービカルフェイスボウとハーブスト(Herbst)のような機能的矯正装置による骨格性Ⅱ級改善の場合の下顎切歯前方傾斜の相違は, Newtonの第三法則に起因する. すなわち, あらゆる作用に対して, 作用と反作用が存在する. フェイスボウについては, 反作用が頸部後方に生じるが, ハーブストのような口腔内装置に対する反作用は下顎歯槽部全体に影響する. これら口腔内装置は骨格性Ⅱ級の改善に効果的ではあるが, IMPAをコントロールすることに欠けている. Hansenの研究では, IMPAは98.5°から109.5°に変化し, 下顎切歯は11°前方傾斜した. 患者が治療後5年で保定をやめたとき, 切歯は101.5°に整直し, 結局, 実質的な変化量はもともとの位置から3°の前方傾斜ということだった(図4-1). メカニクス下顎切歯歯軸角(IMPA)をコントロールするために, ブラケットとアーチワイヤーを正確に特定化し問題解決に取り組む. ・0.018インチスロット. ・下顎切歯ブラケットの-5°のトルク. ・下顎第一大臼歯の-6°の傾斜. ・トルクコントロールのため, 最初から柔軟性の高い角アーチワ イヤーを用いる. ・もし必要であれば: ―スペースを得るための 隣接面エナメル質削除(slenderizing) を行う. ―大臼歯を整直させるために初期に 3級ゴムを使用する. 叢生が重度で角アーチワイヤーを結紮できない場合, あるいは治療計画より切歯の前方移動が可能な場合には, 下顎のアーチワイヤーに0.016インチナイチノール(NiTi)を使用しても良い. 矯正医が引き起こす共通の間違いは, スペースを得るため切歯間にオープンコイルスプリングを使用することであり, これは 切歯の前方傾斜を生じる. 前方傾斜を軽減するため, 隣接面エナメル質削除に加えて, 3級ゴム(1/4インチ, 3オンス)を治療の最初3日間(72時間)装着することができる. この遠心への力が下顎第一大臼歯(ブラケットには-6°のアンギュレーションがついている)を整直し, スペースを得ることができる. あまり長い間3級ゴムを装着することは, 下顎切歯の不必要な挺出を生じるので望ましくない. 次回の診察日に, もう一度隣接面削除をすれば, しっかりとアーチワイヤーを結紮できるであろうし, 患者に3級ゴムを再度72時間使用させても良い. なお, この処置は最長3か月間適用できる. 0.016×0.022インチあるいは0.017×0.025インチの マルチストランディッドアーチワイヤーが使用できるところまで捻転が減少すれば, ただちに3級ゴムの使用を中止する. そのときには, 角アーチワイヤーと切歯ブラケットのトルク(-5°)によって, 下顎前歯のトルクはコントロールできるようになる. アレキサンダーディシプリンのトレードマークは, 下顎中切歯の-5°トルクの仕様である. 0.018インチスロットのブラケットにおけるトルクの値は, 0.017×0.025インチ ステンレススティール(SS)アーチワイヤーを使用する場合, アーチワイヤーに5°の自由度を補償するように設計されている. 結果として, これらの歯にかかる力は0°トルクである. -5°の歯冠舌側あるいは歯根唇側傾斜トルクは, 0.017×0.025インチアーチワイヤーと0.018インチのブラケットスロット間の0.001インチの遊びを補っている. 図4-1 (a)治療前の下顎切歯歯軸角(T1). (b)ハーブスト装着を用いた治療後の下顎切歯歯軸角(T2). (c)治療後5年経過時の下顎切歯歯軸角(T3).

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