迷ったときに見る口腔病変の診断ガイド
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第3部 口腔領域における癌と口腔診断のための基礎知識の癌がみつかる場合を同時性重複癌といい,口腔癌を治療したのち(1年以上)に他臓器に癌がみつかる場合を異時性重複癌という. 一般に異時性口腔多発癌とは,口腔の原発性の癌腫を手術したのちに,1年以上の間隔をおいて同じ組織型の癌腫が口腔に発生した場合をいう.2.転移性癌a.頸部リンパ節転移(甲状腺癌) 頸部リンパ節には,口腔癌のみならず,近傍臓器・組織に由来する癌の転移がしばしば認められる. 初期には無痛性の可動性リンパ節腫脹としてみられるが,癌の増大にともない硬さが増し,非可動性となり,リンパ節外へ癌が浸潤した場合には皮膚の発赤や疼痛などの症状をともない,皮膚潰瘍を呈することもある(図13‐2). 問診で癌の既往があり,咽頭や口腔内に感染・炎症巣がみられず,無痛性の硬いリンパ節腫脹が生じた場合には癌の転移を念頭におくことが肝要である. 原発臓器の確定には病理組織診断および免疫組織学的診断を行う.そのほかに結核や悪性リンパ腫などが鑑別に挙げられる.b.頬骨弓転移(胃癌) 頬骨弓の胃癌の転移を含め,他臓器からの癌が口腔領域に発見されることがある.口腔癌のうち,転移性癌の占める割合は1~2%で,乳癌,肺癌および腎癌が多い(図13‐3a). 転移部位は顎骨,歯肉に多くみられる.血行を介して顎骨内に転移した癌が,抜歯を機に抜歯窩から易出血性の顆粒状肉芽様に増殖し,治癒不全という形で発見されることもある.図13‐3a 胃腺癌の転移.図13‐3b 胃腺癌の頬骨弓転移.図13‐2 甲状腺癌の頸部リンパ節転移.130

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