迷ったときに見る口腔病変の診断ガイド
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第13章 口腔癌の多重,同時・異時性と転移性 頬骨弓に転移した癌が大きく増殖した場合には,開口障害を訴えることがあり,診断において重要な所見となる(図13‐3b). 顎骨や頬骨転移では癌の増殖にともない病的骨折を生じることもあり,外傷の既往がなく,表面粘膜も正常で,エックス線写真で不整な骨吸収像がみられた場合には,顎骨原発腫瘍以外に転移性癌の可能性を念頭におくべきである.鑑別には病理組織診断がなされる.c.耳下腺内リンパ節転移(上顎歯肉癌) 耳下腺内リンパ節への癌の転移としてもっとも考えられるのは,耳下腺原発の唾液腺悪性腫瘍の転移であるが,他臓器からの転移も起こりうる(図13‐4a). まれに耳下腺内リンパ節から悪性リンパ腫が生じることがあり,大きく腫大した場合には,耳前部皮膚の腫脹により顔貌の左右非対称が現れ,口腔内側に腫大した場合には誤咬や開口障害が現れることもある(図13‐4b). 悪性リンパ腫に比べて,癌のリンパ節転移のほうが触診上,やや硬く感じられる場合が多い.鑑別には穿刺吸引細胞診および組織診断がなされる.d.歯肉・歯槽部(肝臓癌・大腸癌) 総胆管癌,肝臓癌,腎細胞癌,肺扁平上皮癌などが歯肉・歯槽部に転移することがある(図13‐5a).血流を介して顎骨歯槽部に転移巣を形成し,増殖により歯肉腫脹および歯肉を破壊して易出血性の潰瘍を形成する(図13‐5b). さらに増大すれば潰瘍をともなう顆粒状および疣状の腫瘤としてみられる.図13‐5b 大腸腺癌の転移.図13‐5a 肝細胞癌の転移.図13‐4a 耳下腺転移性癌.図13‐4b 耳下腺転移性癌.131

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