迷ったときに見る口腔病変の診断ガイド
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第3部 口腔領域における癌と口腔診断のための基礎知識いるが,癌の浸潤像など組織構造の把握には適さない.したがって,細胞診は確定診断を得る目的で施行されるものではなく,病変が良性なのか悪性なのか,あるいは非腫瘍性病変なのかの判断に通常用いられる. 一方,良悪性の鑑別を含め治療方針を決定する目的で病理検査を行うのであれば,確定診断にいたる確率の高い組織診が必須となる.a.細胞診と組織診の利点 細胞診は患者に与える侵襲は少ないが,情報量も少なく確定診断にいたる確率は低いので,癌の浸潤程度や脈管侵襲像など組織構造の把握ができない. 組織診は患者に与える侵襲は大きいが,情報量が多く確定診断にいたる確率が高く,癌の分化度,浸潤程度,脈管侵襲像など組織構造の把握が可能である. 実際の細胞診と組織診の顕微鏡写真を図14‐1a~dに示す.b.細胞・組織の採取方法と標本作製の過程 細胞診では,擦過法,穿刺吸引法などで細胞を採取するが,不適切検体とならないように,病変部から確実に適切な細胞量を採取する必要がある(図14‐2). 組織診では,肉眼で正常にみえる部分を含めた病変部の組織採取が必要である(図14‐3). 癌性潰瘍の場合は主に境界部において,正常上皮から移行するように癌の間質浸潤像がみられるので,潰瘍底部を一部含めて境界部の組織を採取することが重要である.c.細胞・組織の固定法 一般的に細胞診(Papanicolaou染色用)の固定法は2013-5678○○ ○子初診時口腔内所見病変部をブラシで擦過塗抹封入2013-5678○○ ○子固定(湿潤固定)95%エタノール(スプレー固定)Papanicolaou 染色注意:(Giemsa 染色は、乾燥固定のみ)2013-5678○○ ○子図14‐2 細胞診における細胞の採取方法と標本作製の過程.134

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