CAD/CAM YEARBOOK 2013
2/8

10TECHNICAL REVIEWCAD/CAM総義歯の潮流金澤 学/山本信太/中村敏成/水口俊介(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 老化制御学講座 高齢者歯科学分野)全部床義歯製作CAD/CAM化の意義 固定性補綴やインプラントの分野においてはCAD/CAM技術が応用されはじめてから数十年が経過しているが、可撤性義歯の分野においてはCAD/CAM技術の応用は遅れている。これは、可撤性義歯では欠損部分の形態が口腔機能とともに動く軟組織によって左右されるため、補綴物の形状データを容易に得ることができなかったことに起因する。当分野では以前からCAD/CAM化を念頭に、さまざまな試みを行ってきた。近年、関連の技術が飛躍的に進歩し、製作過程の一部をCAD/CAM化することが可能となったので、ここに報告する。 全部床義歯の歴史は古く、現在行われているロストワックス法による義歯製作法は、現在に至るまで約70年間変わらずに続いている。 この全部床義歯の製作方法には次のような問題点がある。①複雑な治療と技工工程②テクニックセンシティブ 工程が複雑であるがゆえに、義歯のクオリティは歯科医師と歯科技工士の熟練度に依存してしまう。③義歯床用材料の汚染と強度 アクリルレジンにはデンチャープラークが付着しやすく、耐汚染性に優れた材料とはいえない。また、破折することもあり、さらなる強度が求められる。 これらの問題を解決する手法として、われわれはCAD/CAM技術を応用した全部床義歯製作法を考案した。この技術の応用により手作業で行われていた工程の大部分をPCと加工機・造型機が行うようになり、上記の問題が解決されると思われる。CAD/CAM義歯の製作法 表1に、従来法とCAD/CAM技術を応用した全部床義歯製作法の流れを示す。本稿では、このCAD/CAM技術を応用した全部床義歯製作法について1例の臨床ケースを通じて説明する。 患者は75歳男性、上下無歯顎患者。「入れ歯の安定が悪く、ご飯が食べにくい」ということを主訴に来院した。患者が使用中の義歯は粘膜調整材が残り、粘膜面は不適合な状態であった。1)印象・咬合採得 本症例では既製トレー(ディスポーザブルトレー、ジーシー)を用いて、印象採得と咬合採得を行った。このトレーは印象採得と咬合採得が同時に行える。はじめにトレーの口腔内試適を行う。長過ぎる部分を削除し(図1)、その後ヘビーボディータイプのシリコーン印象材(エクザデンチャーボーダータイプ、ジーシー)を用いて、1回目の印象を行った。印象採得終了後に辺縁の厚みと長さを確認し、長すぎる部位と厚すぎる部位はメスやカーバイドバーを使用

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です