別冊 YEAR BOOK 2014
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Part 4 日本の臨床家が示す“現代の歯内療法ダイジェスト”細菌に対する抗菌効果も検討した.材料および実験方法 20個の透明人工歯根モデルの根管を実験開始前にファイルサイズ#35まで拡大し,拡大終了後に人工有機質を根管内に緊密に挿入した.本研究で使用した人工有機質は過去のいくつかの論文に採用されているものを使用した.また歯根が透明な下顎大臼歯人工歯20本の人工歯根管をファイルサイズ#40まで拡大し,その後根管充填用シーラー(キャナルスN)を根管内に緊密に挿入した.人工有機質,キャナルスNともに硬化後,それぞれ20本の透明歯根根管モデルを除去前の処理の違いで5本ずつの4グループ①BO試薬前処理グループ② 10%次亜塩素酸ナトリウム製剤(ADゲル)前処理グループ③EDTA製剤(RCprep)前処理グループ④未処理グループに分類した.各薬剤を人工有機質,キャナルスNにそれぞれ塗布し,塗布30秒後に手用Kファイルを用いて除去を行った(図1).除去終了は視覚的に判定し,結果を統計学的に評価した. つぎにBO試薬による抗菌効果の有無を検討した.1新しい試作う蝕溶解剤を用いた根管治療の有効性に関する基礎的研究Basic Study on the Effectiveness for Root Canal Treatment with the New Prototype Caries Removal Reagent山田嘉重1/増田宜子1/木村裕一2/宮崎 隆3Yoshishige Yamada,Yoshiko Masuda,Yuichi Kimura,Takashi Miyazaki1昭和大学歯学部歯科保存学講座歯内治療学部門,2奥羽大学歯学部歯科保存学講座歯内療法学分野,3昭和大学歯学部歯科保存学講座歯科理工学部門連絡先:〒145‐8515 東京都大田区北千束2‐1‐1緒言 われわれはこれまでに新規化学的・機械的う蝕象牙質除去剤(BO試薬)を開発し,現在臨床応用に向けて準備を行っている.BO試薬は主成分としてパイナップルの酵素であるブロメラインを10%,オレンジオイルを20%含有しており,残りの成分も口腔内や生体組織に安全な成分で構成されている. ブロメライン酵素は有機質軟化作用を有することが広く知られている.オレンジオイルは有機質等の除去効果に優れており,これまでさまざまな製品の除去剤に応用されている.さらにオレンジオイルには抗菌作用などのいくつかの効果も報告されており,ブロメラインとオレンジオイルを含有したBO試薬は安全でかつう蝕除去以外のさまざまな効果も期待できる. これまでに本試薬がカリソルブを代表とする従来の化学的・機械的う蝕象牙質除去剤より安全でかつ短時間にう蝕象牙質除去ができることを確認し,その結果をさまざまな学会に報告してきた.このように高いう蝕除去効果を有するBO試薬が根管内に残存している有機質や根管充填用シーラーに対しても除去促進効果を有するかを検討することを本研究の目的とした.また急性化膿性根尖性歯周炎の根管内88

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