インプラント周囲炎の科学と臨床
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48はじめに より確実な、あるいはより早いオッセオインテグレーションの獲得や高い審美性のインプラント修復達成のためにさまざまな改良が行われてきた。この目的のために行われてきた表面性状の改良や補綴様式、形態の変更はわれわれ歯科医師に大きな恩恵を与えてきたと同時に、中・長期的にインプラント周囲の炎症リスクの可能性を高めてきた。 近年しばしば遭遇するインプラント周囲炎に対する治療は容易ではない。このインプラント周囲炎に対する治療法にはいくつかの問題点が存在する。まず、その多くが無自覚に進行し早期の発見が困難であり、加えて治療に対する患者の理解が得にくいことが挙げられる。次に、インプラント周囲炎に対する治療の定義が確定しておらず、診査・診断において明確な基準がないこと、進行したインプラント周囲の骨吸収に対する決定的な治療法に乏しいこと、またインプラント表面の汚染の除去が困難であるとともに再インテグレーションの獲得が難しいこと、さらに複数のリスク因子においていまだコンセンサスが得られていないこと、などが挙げられる。 そこで本稿では、近年のインプラント治療における大きな問題の一つであるインプラント周囲炎に対して予防的な観点から考察を加えてみたい。インプラント周囲炎とそのリスク因子 プラークコントロールに不安があるにもかかわらず長期的に生存しているインプラントが多々存在する一方で、術後数年のうちにインプラント周囲の骨吸収が進行し、最悪の場合インプラントを撤去あるいは脱落するケース予防的観点からみたインプラント周囲炎●水上哲也・略歴1985年 九州大学歯学部卒業 九州大学歯学部補綴学第1教室 入局1987年 同教室文部教官 助手1989年 西原デンタルクリニック 勤務1992年 福岡県宗像郡にて開業2005年 久留米大学医学部にて学位取得(医学博士)2007年 九州大学歯学部 臨床教授現在、日本補綴歯科学会会員、日本歯周病学会会員、日本臨床歯周病学会会員、日本口腔インプラント学会会員、OJ副会長水上哲也(水上歯科クリニック)

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