インプラント周囲炎の科学と臨床
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54はじめに これまでの疫学調査から、インプラントの合併症に占めるインプラント周囲炎の割合が高いことが明らかとなった。インプラント周囲炎では、天然歯における歯周炎と同様、細菌感染によりインプラント周囲組織に炎症が惹起され、破壊が起こると考えられている。 一方、インプラント周囲炎が発症するとその進行は天然歯と比べ早く、また治療が困難であると感じている臨床家も多いのではないか。インプラント周囲炎に認められる臨床症状は天然歯における歯周炎と類似しているが、歯周炎に対する治療をそのまま適用するだけではうまくいかないことが多い。インプラント周囲炎の治療法はまだ確立されているとは言えず、治療のターゲットとなるべき原因因子についても、不明な点が多く残されている。 近年、分子生物学的手法を応用することにより、細菌検査技術が飛躍的に進歩した。今回はインプラント周囲炎の主因としてのプラークに注目し、天然歯とインプラント周囲の細菌叢の比較、およびこれらのデータから読み取れるインプラント周囲炎の臨床像について考察する。インプラント周囲炎の発症率と病因 2008年に開催されたThe 6th European Workshop on Periodontology1)において、インプラント周囲炎は対象患者の28.0~77.4%、インプラント数の12.0~43.0%に発症していたと報告されている。東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来の来院患者を対象にした調査では、31.0%の患者が生物学的トラブルを主訴に来院し、その99.0%はインプラント周囲炎であった(図1、2)。また当院でインプラント治療を受けた患者の17.6%(イインプラント周囲炎の細菌学的考察●和泉雄一・略歴1979年 東京医科歯科大学歯学部卒業1983年 東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了・ 歯学博士1987年 ジュネーブ大学医学部歯学科講師 (~1989年9月)1992年 鹿児島大学歯学部歯科保存学講座(2)助教授1999年 鹿児島大学歯学部歯科保存学講座(2)教授2007年 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授(歯周病学分野)2008年 東京医科歯科大学歯学部附属病院病院長補佐和泉雄一、小柳達郎、竹内康雄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野)インプラント周囲炎歯周炎250200150100500novel phylotypes70species74species64species54species49species38speciesknown phylotypescultivated phylotypes

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