インプラント周囲炎の科学と臨床
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Erbium LaserによるWater-Micro-Explosion法を用いたインプラント周囲炎治療63浄、レーザーなどで殺菌、という方法でも改善することは考えられるが、骨の吸収をともなうインプラント周囲炎の場合は、インプラント表面を露出しその結果、汚染物質や細菌などで汚染されているので、フラップを開けて直接その部分を除染(除去ならびに殺菌、滅菌)しない限り、その面に対する再オッセオインテグレーションは起こらないとわれわれは考えている(もしそのような処置を行わなくてもオッセオインテグレーションが起こるのなら、インプラント埋入の時にインプラント表面を何で触ってもよいことになる!)。Erbium Laserを用いたインプラント周囲炎治療法の開発 われわれは、汚染されたインプラント表面の除染を行う方法として、Erbium Laserの水に特異的に吸収する波長吸収特性(CO2レーザーの約10倍、Nd:YAGレーザーの約6万倍、半導体レーザーの約60万倍)によって(図1)発生するWater-Micro-Explosion(水小爆発)(図2)を利用して、インプラント表面の微小構造を変化させることなく汚染された酸化チタン層のみを除去する(図3)という新しい方法の開発に着手した。そのためもっとも肉眼で酸化チタン層を認識しやすいTiUnite®(Nobel Biocare社)を対照とし、さらに実験を次の3つのパートに分け行った。 ① Erbium Laserを用いてTiUnite®層を蒸散剥離するための適切な照射条件の選定。② Erbium Laser照射によるインプラント体の温度上昇変化についての実験。③ Erbium LaserのWater-Micro-Explosion(水小爆発)を用いた汚染されたTiUnite®層蒸散剥離後のインプラント表面に対するオッセオインテグレーション獲得の有無を検証のための動物実験。蒸散剥離のための適正エネルギー 酸化チタン層であるTiUnite®表面を一層蒸散剥離させ、かつ熱的溶解などが起こらない適切な照射条件を解明するために、われわれは単位面積あたりのエネルギーを50mj/mm2、100mj/mm2、および200mj/mm2にて蒸散図1 Erbium Laserの波長吸収特性は他のレーザーに比べて得意的に水成分にエネルギーが吸収されることである。図3 Water-Micro-Explosionによって蒸散剥離したインプラント表面。熱的な溶解などは起こっていない。図2 Erbium Laserのエネルギーが水に吸収され、そのことによって水が気化する際の体積膨張は約1,000倍に達する。Water-Micro-Explosionと呼ばれるその爆発的な膨張エネルギーを、物理的なエネルギーとして応用している。absorption coefficient of waterWave length(μm)10-11.02.03.04.05.06.08.010.0100101102103absorption coefficient(cm-1)Erbium2.94μmNd:YAG1.06μmDiode0.8-1.0μmCO210.6μm

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