人はなぜ歯周病になってしまうのか?
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55第Ⅲ部 多様性第2章 多様性と疾患感受性はじめに ヒトゲノムに多様性があることがわかると,病気になりやすさにも個人差が出てくるだろうと考えるのは当然のことである.歯周病も多少,医科の後塵を拝しながらいろいろと調べられている.本章では,多様性を疾患感受性に結びつける話をしてみたい.歯周病とSNP SNP(single nucleotide polymorphism:一塩基多型)と歯周病の関係はかなり幅広く調べられている.サイトカインや酵素,受容体など歯周病の発症,進行にかかわるのではないかと考えられているようなタ第Ⅲ部多様性第2章多様性と疾患感受性ンパクは“ほとんど調べつくされた感”がある.結論は……パッとしない.というか“はずれた感”が非常に強い1(あくまで私見です,図1).歯周病は単一遺伝子疾患ではなさそうなので,1つの遺伝子の多型で大きく疾患感受性が変わるということ自体少ないかもしれない.もしかしたら単独のSNPでは小さな影響でも,いくつかのSNPを掛け合わせていくとオッズ比が上がっていくのかもしれない.歯周病におけるSNPのデータを見ていると,自分たちが想定している病因論そのものが“はずれている”のではないかと自信をなくすくらいガッカリしている私だが,まだまだあきらめるのは早い. 第Ⅱ部第2章の話のなかで,赤オプシンと緑オプシンが遺伝子重複を起こしたと説明をしたが,この遺伝子重複により遺伝子の数が変わっていることがある.いわゆるコピー数多型(copy number variation)と呼ばれるこの多型も次世代に伝わるもので,個人差や疾患感受性に関係する可能性がある.たとえばCCR3L1遺伝子のコピー数が減少するとHIVに感染しやすくなると言われている.歯周病関連のコピー数多型の報告は寡黙にして知らない. それとSNPは人種差,民族差,地域差が出やすいので,配慮が必要である.米国で関係が深いと言われても,それが日本でも通用するとは限らない.実際,IL-1やIL-6,IL-10,VDR(Vitamin D Receptor)などはSNPと歯周病の関係があるという報告があるものの,アジア人ではほとんど“シロ”である2.▶SNPははずれてる?図1図1 歯周病は単一遺伝子異常による遺伝病ではないようなので,ドンピシャでリスク因子となるSNPは見つからないかもしれない.

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