プロフェッショナルデンティストリー STEP5
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情報の豊かさは注意の貧困を招く――これは、ノーベル賞経済学者であるSimonの言葉である。われわれにはある程度の情報は必要であるが、情報量が多すぎると処理しきれなくなり、重要な情報にまで注意が行き届かなくなる可能性があるという。その結果、情報過多は混乱を招き、適切な判断ができなくなる。 事実、通信技術の発展した現在では、インターネットをはじめ各種メディアを通じ、歯科医院検索はもとより口腔疾患に関する病態から治療法まで、患者は多岐に渡る情報を入手することができるようになった。さらにクチコミやうわさなども加わり、過剰ともいえる情報が溢れ、その結果、患者は自分に適した治療法あるいは歯科医院を選択することも容易ではなくなってきている。 これは若い歯科医師にも当てはまる。近年、われわれはセミナーや研修会はもとより、新しいマテリアルや機器類に至るまで、国内外を問わずさまざまな情報を入手できるようになった。これは、選択肢が多いというメリットがある反面、本当に必要な情報を選択することが難しくなったというデメリットも生んだ。 Pink1) によると、経済学的な人間の進化の過程は、①農耕の時代、②工業の時代、③情報の時代と続いたが、多量の情報が簡単かつ低コストに誰でも入手可能になったことで情報の価値が低下し、情報の時代は終りを告げ、④コンセプトの時代に突入したという(Fig.2-1)。 コンセプトの時代は、『正解のない時代』ともいわれている1)。そんな時代における患者の歯科医院選択は、どのように行われるのだろうか?筆者は、いうまでもなくコンセプトがキーワードになると考えている。つまり患者は、その歯科医師(歯科医院)のコンセプトに共感することでその歯科医院を選択し、治療を任せるのではないだろうか。いい換えると、みずからのコンセプトを明確にすることで、患者に選ばれ、また患者を選ぶ歯科医院の構築が可能な時代が到来したと考えることができるだろう。 Pink は、コンセプトの時代を生き抜くにはFig.2-2に示した6つの感性が必要としている1)。以下、歯科医療と6つの感性の接点について解説したい。Chapter 2LIFE 患者に幸福感と安心感を与えるには治療計画の立案と実行に必要な6つの感性Chapter 2-124

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