プロフェッショナルデンティストリー STEP5
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Case 3-7 サイナスフロアエレベーションを回避した治療計画【症例の概要】 患者は73歳・女性である。7654欠損と467欠損に伴う咀嚼障害を主訴に来院した。上顎右側の既存骨はほとんど存在しないことから、インプラントを埋入するためにはサイナスフロアエレベーションが必要と診断した。この部位の難易度はきわめて高いが、適切な上顎洞底の挙上とインプラントの埋入が行えれば確実に咀嚼力の回復が期待できることから、患者に治療効果とリスクを説明し同意を求めたものの、患者は受け入れなかった。患者はデンチャーによる欠損修復に対しても抵抗感があると訴えたことから、8部へのインプラント傾斜埋入と、4部への通常埋入による可撤式のアタッチメントデンチャーを装着することにした。aaccCase 3-7b 術前の上顎咬合面観。右側の水平的骨幅は十分にある。bbCase 3-7d 傾斜埋入されたインプラントにサブストラクチャーとなるバーをスクリューで固定した状態。ddCase 3-7a 術前の状態。診査の結果、上顎右側の既存骨はほとんど存在せず、インプラントを埋入するならばサイナスフロアエレベーションが必要と診断した。また下顎左側の欠損修復は、5をサブマージドルートプリザベーションで残存させ、歯槽骨の吸収を抑制したインプラントブリッジを計画した。Case 3-7c 患者はサイナスフロアエレベーションに同意しなかったため、8部へのインプラント傾斜埋入ならびに4部への通常埋入による可撤式のアタッチメントデンチャーとした。この補綴設計は、6の予知性を考慮した上で決定している。6は動揺とやや挺出が認められることから、抜歯、インプラントもしくはブリッジによる修復を提案したが、患者は保存を希望した。6の予知性を考慮すると、将来はブリッジまたはインプラントになり、それに準じて上顎の再補綴も余儀なくされる。上顎右側はブリッジによる補綴も可能であったが、修理も安価かつ容易に行えることから、可撤式のアタッチメントデンチャーを採用した。ffeeCase 3-7e 補綴設計。デンチャー内のバーにはマグネットを挿入し、さらに頬側に歯冠外アタッチメントを使用している。Case 3-7f アタッチメントデンチャーの咬合面観。Chapter 3LONGEVITY 患者の将来を考慮した歯科治療93

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