プロフェッショナルデンティストリー STEP5
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3患者側の変遷 Chapter 4-1でも述べたように、生活や仕事に追われていた時代の国民にとって、直接生命を脅かすことがない(と考えられていた)歯科の優先順位は低く、歯科医院は「痛いときだけ、腫れたときだけ」通院する場所であった。筆者が歯科医師になった30年前は、ブラッシング指導をしようとすると「歯の治療に来ているのであって、歯ブラシの使いかたをわざわざ忙しい時間を割いて聞きに来ているのではない」と言って帰ってしまい、二度と来なくなった患者が多く存在した。 しかし公衆衛生が行き渡り、社会が豊かになって患者に時間的な余裕が生まれた結果、歯科に対する患者の意識にも変化が生まれ、今では「いちばん予約がとれないのは歯科衛生士の時間」という状況にまで変化してきた。実際、現在では健康観の向上ならびに歯科疾患に対する理解が深まったことにより、若年者ではう蝕、歯周病が減少し(Fig.4-11)、高齢者では無歯顎人口比率が減少してきた(Fig.4-12)。 一方、これまであまりいわれてこなかった『力』がクローズアップされるなど、新たな問題が発現してきている。 いずれにせよ、時間軸で患者をみていく必要があり、改めてメインテナンスの重要性が確認されている。その結果、歯科衛生士の位置づけが明確になり、その社会的地位も向上してきている。歯科衛生士のさらなる技術、知識の充実は不可避であろう。 今後、う蝕や歯周病は減少し続け、その結果、治療ではなくメインテナンスのために歯科医院に通う患者が増えていくことが予想される。いわば、CureからCareの時代になってきたといえるのではないだろうか(Case 4-13~4-15)。Fig.4-11 5~15歳未満の1人平均DMFの推移 (1987~2011年)10)Fig.4-12 65歳以上の有歯顎者・無歯顎者人数の推計(年次推移)11)■1987年■1993年■1999年■2005年■2011年876543210(本)567891011121314(歳)■ 有歯顎者数■ 無歯顎者数302520151050百万人 数1975年1981年1987年1993年1999年2005年Fig.4-11 若年者のう蝕は、間違いなく減少傾向にある。Fig.4-12 高齢者の有歯顎者はこの30年で増加を示したが、無歯顎者の人数はほとんど変化がない。Chapter 4QUARITY 患者は何を求めているか132

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